本研究の目標は、フェムト秒レーザーを応用した光超音波顕微鏡により細胞の顕微鏡像を得ることである。このために、1. フェムト秒レーザーによる超音波発生条件の検討、2. 導電膜を一体化した高感度・高機能圧電素子の開発を行い、最終的には3. 光超音波顕微鏡システムの構築による細胞の観察を行う。 レーザー光をファントム上で10ミクロン程度にフォーカスさせ、周波数帯域0.8~1.0 GHzの超音波振動子で検出することでGHz帯域の光超音波信号の発生条件を確認した。高感度・高機能圧電素子については、まず、酸化亜鉛(ZnO)薄膜の結晶性分析によりc軸配向性に寄与する要因を解明し、高ピエゾ効果を有するZnO薄膜を開発する。次に、遷移金属であるバナジウム(V)を添加した低抵抗のZnO薄膜(VZO)を電極として用いることで、高感度および低ノイズを両立した一体成型のGHz超音波センサを開発した。 光超音波顕微鏡システムとしては、まず、ZnO薄膜に置いた厚さ5ミクロンの生体ファントムにレーザーを照射することで超音波信号の発生を確認した。次に、レーザー光の照射やピエゾアクチュエーターによる試料保持台の二次元スキャン、さらに、超音波信号の取得、信号プロセッシング、イメージプロセッシングにより、光超音波顕微鏡システムを構築した。 細胞の観察については、線維芽細胞をPETフィルム上に培養し、PETフィルムとZnOセンサを密着させ、フェムト秒レーザー照射により発生した超音波をZnOセンサで検出することで、培養細胞像を構築した。
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