研究課題/領域番号 |
26282147
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
黒田 嘉宏 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (30402837)
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研究分担者 |
間下 以大 大阪大学, サイバーメディアセンター, 講師 (00467606)
松田 公志 関西医科大学, 医学部, 教授 (20192338)
竹村 治雄 大阪大学, サイバーメディアセンター, 教授 (60263430)
清川 清 大阪大学, サイバーメディアセンター, 准教授 (60358869)
吉田 健志 関西医科大学, 医学部, 助教 (40572673)
新岡 宏彦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (70552074)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 低侵襲治療 / 有限要素法 / 外科手術 / パターン認識 / 生体力学 |
研究実績の概要 |
近年、ナビゲーション加算が付与されるなど、手術ARナビゲーションの重要性は益々高まっている。一方、特徴点情報の不足や変形への対応について課題があり、臓器などの非剛体への適用方法は未だ確立していない。本課題では、臓器の大回転変形や切開においても臓器モデルの重畳を可能とする柔軟物追跡技術の確立を目指している。平成26 年度は、基本機能(計測、構造計算、画像認識)の開発として、多層計測技術を生体被膜に適用し、大回転変形、非線形材料、切開による構造変化を実時間処理可能な有限要素モデルの開発と、非剛体に対応した物体追跡技術の開発までを計画した。 概ね計画どおりに実施することができた。計測としては、液晶可変フィルタと高感度カメラからなる多層計測システムを設計・構築し、10nm幅のNarrow Band Imagingで生体を多波長で高フレームレートに計測可能とした。実験の結果、通常のRGBカメラで撮影するのに比べて特徴点数が優位に増加し、また特徴点分布が各波長で異なることから追跡に有用な情報が得られることが分かった。計算としては、従来実時間処理が難しかった共回転手法の逆剛性マトリクス更新をSherman-Morrison-Woodbury手法により逐次的に実施可能としたうえで、ユーザが対話的に操作可能なシステムを構築し、手法の完成度を高めた。また、非線形材料の代表である超弾性材料を高速計算するために剛性マトリクス表現を可能とし、単純引張試験シミュレーションの結果、従来の繰り返し最適化を行う方法と同等の変形精度を1/10以下の時間で計算できることが示された。また、同様に剛性マトリクスの逐次更新により切開・破断を表現可能とした。画像認識としては、組織切開・破断モデルに特徴点追跡手法を組み込み、組織変形から破断への構造変化において特徴点がどのように振る舞うかを観察可能とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に計画した、基本機能(計測、構造計算、画像認識)の開発、具体的には多層計測技術を生体被膜に適用し、大回転変形、非線形材料、切開による構造変化を実時間処理可能な有限要素モデルの開発と、非剛体に対応した物体追跡技術の開発までを実施できたため。成果の一部は、年度末に投稿締切があった、当該分野における権威的な国際会議であるIEEE Engineering in Medicine and Biology ConferenceのContribution paperに2件投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、基本機能の高度化として、麻生計測技術の高度化、非線形柔軟物力学モデルの逆解析、AR画像生成機能の開発を行い、機能の統合を行う。具体的には、対象臓器に特異的な波長を分析し、選択的に用いることで、高速運動条件下における計測を可能とする。また、切断や剥離といった術中手技による変化に対応可能な追跡技術を開発する。さらに、画像生成機能として、カメラ位置に応じて、実物体上に変形させた柔軟物モデルを重畳するAR画像生成機能を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに発売された低価格な高感度カメラを導入することにより、装置購入に必要な価格を抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
広い波長帯域をもつ光源と長波長帯のフィルタを購入することにより、従来得られなかった長波長帯の画像および特徴点分布を得ることができると期待される。
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