研究課題/領域番号 |
26282148
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
寺本 憲功 佐賀大学, 医学部, 教授 (40294912)
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研究分担者 |
小玉 哲也 東北大学, その他の研究科, 教授 (40271986)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 低侵襲治療システム / 血管新生 / siRNA |
研究実績の概要 |
『血管新生に深く関与する低酸素誘導因子(HIF-2α: Hypoxia-Induced Factor-2α)を特異的に抑制する制御因子(Int6)』を標的とし、全く新しい設計理論に基づいて作成した核酸医薬、『新型siRNA』を『ハイブリッド型ナノバブル』中に封入し、『ソノポレーション法(音響穿孔法)』を用い、虚血下肢筋組織に対して低侵襲的なsiRNA導入し、血管新生の効果を明らかにすることを研究目的としている。 初年度に作成した『ハイブリッド型ナノバブル』を用い、『ソノポレーション法』によるsiRNA導入効率の条件を設定する目的のために生体内にユビキタスに存在するラミンタンパク質をコードするラミン遺伝子を選択的に抑制するsiRNAを作成した。本siRNAを『ハイブリッド型ナノバブル』中に封入し、『ソノポレーション法』にてマウス前脛骨筋に導入した。一定時間後(1、3、6、9、12、24、48および72時間後)に前脛骨筋を摘出し、前脛骨筋におけるラミン遺伝子の抑制効果をreal-time PCR法にて遺伝子レベルで量的に解析し、『ソノポレーション法』によるsiRNA導入効率の前脛骨筋への導入条件を決定した。 Int6を選択的に抑制する3種類のsiRNA(#1、#2および#3)を作成し、各々のsiRNAをマウス前脛骨筋に導入後、Int6の抑制効果を遺伝子レベルでの量的発現の抑制率を計測した。 さらに3種類のsiRNA(#1、#2および#3)を混入し、3種類のsiRNAの共存下で同様の条件下でマウス前脛骨筋に導入し、Int6の抑制効果を遺伝子レベルでの量的発現の抑制率を計測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラミンタンパク質をコードするラミン遺伝子の発現を選択的に抑制するsiRNAを用い、『ハイブリッド型ナノバブル』中に封入し、『ソノポレーション法』にて導入し、ラミン遺伝子を10%以下にする導入条件を決定した。さらにInt6発現を選択的に抑制する3種類のsiRNAをボナック社の独自アルゴリズムに従い、設計・作成した。各々のsiRNAを単独で様々な濃度でマウス前脛骨筋に導入後、Int6の抑制効果を遺伝子レベルでの量的発現の抑制率を計測した。siRNA導入後、特定の時間域およびsiRNAの濃度域においてInt6の有意な抑制は観察されたが、今後、観察数を増やし、最終的に最も効果の高いsiRNAを決定する。 さらに3種類のsiRNAを全て混在させ、同様にマウス前脛骨筋に導入し、Int6の抑制効果を遺伝子レベルで量的発現の抑制率を計測したが、Int6抑制率が約80%であった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度と同様に主にin vivo実験を実施する計画である。具体的には今後、下記の実験研究を行う。 (1)新型siRNA導入後の血管新生に関する解析 前年度に引き続き、健常マウスの下肢筋組織に対してソノポレーション法にて本siRNAを導入し、微小血管の新生について形態学的手法にて経時的に観察し、かつ定量的解析する。さらに最大の血管新生効果を有するsiRNAを選定する。またさらに新しい配列の新型siRNAを合成し、Int6の抑制効果および血管誘導因子の変化を遺伝子レベルでの量的に解析する。
(2)下肢虚血病態モデルマウスを用いた新型siRNA導入前後の血管新生効果に関する解析 マウス腸骨動脈を結紮すると下肢末梢循環不全が生じ、歩行障害を引き起こすことが報告されている。本方法を用いて下肢虚血病態モデルマウスを作成し、虚血状態における本siRNAによる血管新生効果について組織および動物個体レベルで解析する(X線による血管造影、レーザー光によるリアルタイム血流画像化装置を用いた血流動態)。
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次年度使用額が生じた理由 |
Int6を選択的に抑制する3種類のsiRNA(#1、#2および#3)を設計・作成し、各々の単独siRNAをマウス前脛骨筋に導入後、Int6の抑制効果を遺伝子レベルでの量的発現の抑制率を計測した。しかし単独導入でのInt6の抑制率が低いため、3種類のsiRNAの組み合わせ(例えば3種混合、2種混合での各組み合わせ)の実験を現在、行っている。また上記実験と平行して新たな核酸配列のsiRNAも設計している。そのため、本年度購入予定であったマウスの「自然歩行」の軌跡を高解像度で記録し、数値化可能でかつPC処理にて歩行パターンを解析可能なマウス用自動足跡解析システムの購入を次年度に変えたため、使用額に差が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
Int6を選択的に抑制するsiRNA(単独あるいは多剤併用)が決定次第、マウス用自動足跡解析システムを購入し、下肢虚血病態モデルマウスを用い、新型siRNA導入前後の血管新生効果を歩行障害の回復の有無を詳細に解析し、虚血状態における本siRNAによる血管新生効果について組織および動物個体レベルで解析する。
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