研究課題/領域番号 |
26282150
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山下 紘正 日本大学, 付置研究所, 准教授 (00470005)
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研究分担者 |
梅村 晋一郎 東北大学, その他の研究科, 教授 (20402787)
宮本 義孝 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 研究員 (20425705)
土岐 彰 昭和大学, 医学部, 教授 (50163960)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 集束超音波 / 医療・福祉 / 胎児治療 / 超音波画像 |
研究実績の概要 |
本年度には、特に子宮内胎児の先天性疾患の一つである横隔膜ヘルニアの胎児期治療を対象として、集束超音波により治療手技の一部を安全でかつ容易なものにするためのシステムの構築を進め、評価を行った。胎児の気管内に留置したバルーンを、集束超音波の照射によっていかに素早く、確実に取り除き、気管の閉塞を解除できるか、という仕組みにつき、主に水槽内に沈めたシリコンチューブ(子宮内胎児の気管を模したもの)と、実際に臨床で使用されているバルーンを用いて評価を進めた。 バルーンに注入する液体として、バルーンの素材であるラテックスを溶かす特性のある溶液を、エマルション化、またリポソーム化することにより、カプセル状に閉じ込め、バルーンに注入しただけでは割れないが、集束超音波を当てることで初めてカプセル構造が壊れ、内包していた溶液がバルーン内に溶出し、ラテックスの一部を溶かしてチューブ内で破裂する、または小さな穿孔により内溶液が漏出し、バルーンが萎む、という結果が得られた。昨年度までに試作してきたバルーン注入液(ナノ液滴、マイクロバブル、生理食塩水の混合液)では、超音波照射によりバルーンが割れる、または萎む条件が非常にシビアであり、確実にバルーンの閉塞を解除することができなかったが、本年度に行った実験では、現在までに100%の成功率となっている。今後は生体組織に熱損傷を与えないほどの低エネルギーで、バルーンを確実に割るための集束超音波の最適条件を探索し、胎児治療システムとして臨床で使用可能なレベルまで性能を向上させたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度で検証が不十分であった、先天性横隔膜ヘルニアの胎児期治療を対象としての胎児気管閉塞のためのバルーン解除方法の精度向上に主に注力し、バルーンに注入する溶液の開発と、そのバルーンを確実に割るための集束超音波の照射パラメータの探索を行うことができた。 バルーンの素材であるラテックスを確実に溶かす特性のある溶液(天然由来の試薬)を、エマルションまたはリポソーム構造によりカプセル状に内包し、生理食塩水内で長期間安定した状態を維持した上で、ある一定の条件の集束超音波を照射した時のみ、カプセル構造を破壊し、かつ内包していた溶液によりバルーンを割る、または萎ませることに成功した。現在までのバルーン解除成功率は100%であり、今後はこの確実性を保ったまま、より低エネルギーでの集束超音波照射条件を探索する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、特に先天性横隔膜ヘルニアの胎児期治療を対象として、より低いエネルギーで胎児治療を行なえるようにするための集束超音波照射条件を探索し、さらに母体腹壁へ確実に接触させるための集束超音波トランスデューサの治具(冷却水を循環させた水袋を追加したもの)の製作を進める。次年度までに開発を進めた超音波画像表示機能とナビゲーション機能と組み合わせることで、新しい子宮内胎児低侵襲治療システム化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
故障した実験装置の修理費として見込んでいたが、最終的に実験装置の部品交換が不要となったため、修理費相当分として当該次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の実験用消耗品の購入に併せて使用する。
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