研究課題/領域番号 |
26282156
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中野 治郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20380834)
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研究分担者 |
石井 瞬 長崎大学, 病院(医学系), 技術職員 (20437859)
坂本 淳哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (20584080)
沖田 実 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (50244091)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 血液がん / 温熱療法 |
研究実績の概要 |
平成27年度の基礎研究では,平成26年度の結果を踏まえ,白血病モデルラットへのDMBA投与量を再検討した後,温熱負荷実験を進めた.その結果,2日に1回の40度の赤外線による表在性温熱療法は,白血病モデルラットの血球指標ならびに血清のTNFα含有量、血沈速度などすべての指標に対して影響を及ぼさないことが明らかとなった.つまり,これまで曖昧にされていた白血病に対する温熱療法の安全性が示唆された.ただ,今回の赤外線による温熱療法は骨格筋内のHSP70を増加させたにもかかわらず,タンパク分解の指標であるMuRF1の抑制には至らず,結果として期待していた温熱による筋萎縮の進行抑制効果は得られなかった. 一方,調査研究では順調にデータを蓄積し,その一部を学会等で発表した.具体的には,がん患者の筋出力には筋ボリューム以外に倦怠感と不安抑うつが関わっていることを明らかとし,さらに倦怠感・不安抑うつが強いがん患者に対しては,筋肥大が見込めない低強度の運動プログラムに実施を行えば,倦怠感・不安抑うつの改善とともに筋出力の改善が得られ,ADL,QOLの向上に繋がることを明らかとした.これに,筋ボリュームの改善が加われば,さらなる運動機能の改善とADL,QOLの向上が得られると期待され,その具体的な方法を明らかにすることが次年度の課題となる.ただ,上記の結果は保存療法を行うがん患者すべてを対象とした解析結果であり,予定の血液がん患者のみを対象として解析を行うにはデータ数はまだ不十分である.したがって,データ収集は今後も継続していく必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた基礎研究は完了した.その結果,血液がん患者に対する温熱療法の安全性は示唆された.これは,がんリハビリテーションにおいて大きな意義を持つ知見であり,公表する価値がある.しかしながら,期待していた温熱による筋萎縮の進行抑制効果は得られなかった.これは,臨床研究で温熱療法により筋力トレーニングの促進を図ろうとする本プロジェクトの根幹に関わるものである.したがって,今回は温熱刺激を断念し,次候補である電気刺激に切り替えることに決定した.予定の方法を切り替えたため,順調に進展しているとは言えない。ただ,電気刺激のよる筋力増強促進については,同研究室の別のプロジェクトで行っており,方法についてはそれを参考にすることができるため,混乱は避けられる.
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今後の研究の推進方策 |
筋力トレーニングの補助手段を温熱刺激から電気刺激に変更したため,その効果を基礎研究で確認する必要があるため,今年度も基礎研究を継続する.モデル作成方法や解析方法はこれまでの成果で確立されているため,スムーズに進行すると予想している.また臨床研究においては,調査研究のデータを収集しつつ,介入研究を開始する.介入方法はメインとしては低強度運動,低強度運動+電気刺激の2群の比較を行う.電気刺激機器もすでに整備しているもので対応できると思われるが,その点は慎重に検討し,必要であれば今年度の予算で追加購入する.加えて,これまでの調査研究によりがん患者の筋出力,運動機能には倦怠感,不安抑うつが大きく関わっていることが調査研究で明らかとなった.したがって,これに対するアプローチもプログラムに加える必要性が出てきた.今のところ,低強度運動に加えて教育と身体活動量のフィードバックを行うことを考えており,その理論は認知行動療法に準ずるものである. 基礎研究の成果,調査研究の成果を国内外の学会で発表するとともに,論文にまとめて国際学術雑誌に投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
基礎研究の結果により,介入研究で行う筋力トレーニングの補助手段は温熱刺激から電気刺激に変更することとなった.そのため,介入研究のために購入予定であった赤外線ホットパックを購入しなかった.その分が未使用として残った.
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次年度使用額の使用計画 |
介入研究で行う電気刺激の機器は,1台は既に整備されている.ただ,当機器は他のプロジェクトで購入したものであり,本プロジェクトに占有はできない.また,血液がん患者に適用するためには感染リスクを避けるため専用の機器が必要になる可能性が高い.少なくとも,直接患者の下肢にあてるプローブは専用の物を用意する必要がある.したがって,電気刺激装置関連の購入にH27年度未使用の予算をあてる.
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