研究課題/領域番号 |
26282159
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
緒方 徹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院(併任研究所) 障害者健康増進・運動医科学支援センター, センター長 (00392192)
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研究分担者 |
長尾 元史 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 研究室長 (00359671)
杉森 道也 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (20464026)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オリゴデンドロサイト / 前駆細胞 / カプリゾン / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
髄鞘はニューロンを取り囲むことで活動電位伝播を促進し、またニューロンの軸索の安定性にも寄与している。この髄鞘を形成している細胞がオリゴデンドロサイトであり、脊髄損傷や、多発性硬化症などの脱髄変性疾患では、髄鞘が破壊される。これらの病態を改善するためには、この破壊された髄鞘を再生することが必須である。再髄鞘化を促進するには、オリゴデンドロサイトの前駆細胞を適切に活性化し、分化、成熟させることが必要であるが、その分子メカニズムや、脱髄病変における前駆細胞の動態に関しては未だ不明な点が多い。本研究では、脱髄病変における前駆細胞の動態を明らかにするために、カプリゾン投与による脱髄誘発モデルと脊髄圧挫損傷モデルを用いた。さらに、前駆細胞をラベルし、単離解析できるようPDGFR-CreERT2;CAG-CAT-EGFPマウスを用いて脱髄モデルを作製し、前駆細胞の動態を観察した。その結果、脊髄圧挫損傷モデルマウスの損傷脊髄において、活性化されたオリゴデンドロサイト前駆細胞で発現する新しいエピジェネティック制御因子を見出した。免疫組織染色により、この因子の発現パターンを詳細に解析したところ、活性化された前駆細胞に加えて、分化しているオリゴデンドロサイトにも発現していることが明らかとなった。このことから、この因子は前駆細胞の活性化や増殖、オリゴデンドロサイトへの分化を制御している可能性が考えられた。これを検討するために、オリゴデンドロサイトへの分化能をもつ神経幹細胞において、この因子をノックダウンしたところ、顕著なオリゴデンドロサイト分化の抑制が観察された。この結果より、このエピジェネティック制御因子はオリゴデンドロサイト分化を制御することが示唆された。今後、この因子の分化制御メカニズムや、再髄鞘化に対する必要性を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験に必要な遺伝子改変マウスの導入とその解析は順調に進んでいる。再髄鞘化についての観察結果から新規の制御因子をピックアップし、その機能解析についてすでに培養細胞レベルで髄鞘形成に重要であることを示唆する結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、モデル動物を中心とした解析を行い、H28年度は着目するエピジェネティクス関連分子の機能解析を中心に行い、慢性期の再髄鞘化モデルまで踏み込んだ解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していた遺伝子改変マウスの解析が、マウスの出生ペースの遅れから数がそろわず来年度に実施することになった。それに伴い、消耗品関連費用を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
予定通りの実験を行い、消耗品費用として使用する予定である。
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