研究課題
髄鞘は神経軸索を取り囲むことで活動電位伝搬を促進し、また軸索の安定性に寄与しており、その傷害は脱髄疾患などの変性疾患のみならず、脊髄損傷や頸椎症性脊髄症でも報告されている。脱髄病変の回復には、髄鞘形成細胞であるオリゴデンドロサイトによる再髄鞘化が必要であると考えられているが、再髄鞘化を促進する有効な治療法はない。オリゴデンドロサイトは発生期にその前駆細胞(以下、OPC)から生まれ、成熟し髄鞘を形成する。成体においても一部のOPCは残存し、少なくとも齧歯類では恒常的にOPCからのオリゴデンドロサイト産生が観察されている。このOPCは脊髄損傷などの組織傷害に反応して活性化され、増殖を経て再髄鞘化に寄与することが知られている。このことから、OPCの活性化および増殖促進、その後の髄鞘化促進は、脊髄損傷の機能回復に対する治療戦略の一つとなり得る。しかし、損傷後OPCが活性化し再髄鞘化に至る過程は未だ不明な点が多い。本研究では、チャージ症候群の原因遺伝子として知られているクロマチン再構成因子Chd7が脊髄損傷後のOPCの活性化を制御することを明らかにした。Chd7は成体脊髄においてOPCで発現し、脊髄損傷後、その発現はSox2の発現とともに増加した。OPC特異的Chd7欠損マウスの損傷脊髄での解析や、培養OPCにおけるChd7のノックダウン実験により、Chd7はOPCの増殖、分化、再髄鞘化に必要であることが明らかとなった。また、培養OPCにおけるSox2のノックダウン実験により、Sox2はOPCの増殖に必要であることが示された。さらに、培養OPCにおいてChd7とSox2は直接相互作用した。これらの結果より、Chd7とSox2はOPCで複合体を形成して協調して働き、損傷後のOPCの増殖に関与していることが示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件)
J Cell Physiol
巻: 232 ページ: 986-995
10.1002/jcp.25690. Epub 2016 Nov 30.
J Neuroinflammation
巻: 13 ページ: 235-239
10.1186/s12974-016-0690-8