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2014 年度 実績報告書

運動錯覚とラバーハンドイリュージョンの統合効果の解明と制御に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 26282164
研究機関名古屋大学

研究代表者

大岡 昌博  名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (50233044)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード仮想現実感 / 運動錯覚 / ラバーハンドイリュージョン / 統合効果 / 感覚の制御
研究実績の概要

当該年度では,「ステージ1:仮想現実感やリハビリ機器の設計に必要な基礎データを収集する」を推進した.基礎データの収集は,まず心理物理実験により実施し,身体外部からの刺激の種類・条件と運動錯覚の強度の関係を系統的に調査した.また,次年度以降に実施する予定のfMRIを用いた脳の賦活状態の調査の準備を行った.まず,一連の心理物理実験により上述の関係を調査するために,加振動機,デジタルフォースゲージ,波形生成器,加速度計,デジタルオシロスコープ,加速度ピックアップ,エンコーダなどから構成される運動錯覚呈示装置を完成させた.さらに,次年度のステージ2に向けて,NIRSの使用技術の習得に努めた.当該年度の成果を以下にまとめる.
(1)腱への押し込み力が1.5 N以下であれば,50 Hzから300 Hzまでの周波数範囲で最大100 m/s2の振動刺激を腱に呈示でき,この周波数範囲内であれば,腱にかかる実加速度を内蔵の加速度センサでモニタリングできることを明らかにした.
(2)本開発装置を使い,5名の実験協力者に対してFCR腱を単独刺激した時の手関節伸展方向の運動錯覚誘発実験を行った.その結果,加速度40 m/s2以上の50 Hzから90Hzの振動刺激で,全ての実験協力者に運動錯覚の誘発が確認され,本開発装置の知覚特性評価装置としての有効性とFCR腱を単独刺激した時の錯覚誘発刺激閾値を明らかにした.
(3)振動刺激閾値と接触力の関係を調査した結果,接触子の押し込み力が1.5[N]以下であれば,押し込み力の影響を受けにくく,変位次元で評価し考えた場合,70[Hz]から90[Hz]の振動刺激範囲内では0.15[mm]から0.2[mm]付近に存在することを明らかにした.
(4)押し込み力0.3[N]時の50[Hz]と70[Hz]の振動刺激が,運動錯覚を鮮明に誘発させられること明らかにした.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「ステージ1:仮想現実感やリハビリ機器の設計に必要な基礎データを収集する」を推進するなかで,運動錯覚呈示装置を完成させるとともに,それを用いて運動錯覚を生じさせるための,押しつけ力,振動加速度および周波数の条件を明らかにした.このように,従来研究でなされていなかった運動錯覚を生じさせるための刺激条件について本研究で明確にできた点で,ステージ1の目標である「基礎データの収集」を達成できたと判定した.また,BMIによる運動錯覚の調査,およびラバーハンドイリュージョンについては,研究発表ができる程度の精度は得られなかったものの,NIRSの利用技術の調査や機器設計・環境整備など実施に必要な準備を進めた.したがって,おおむね順調に進展しているという自己採点をした.
なお,fMRI用の振動発生装置の開発については,設計の構想を進めたり,現状の空気圧振動アクチュエータの調査を進めた.その結果,非磁性体で現状のアクチュエータに匹敵するアクチュエータを製作することは現状では困難であることがわかった.今後も,この課題を継続して進めているが,当面,電磁波の影響を大きく受けるfMRIではなく,NIRSを主に用いることで,研究の進展には支障はないと考えている.

今後の研究の推進方策

ステージ2「ステージ1で蓄積した実験結果に基づき運動錯覚のメカニズムを解明して理論を構成する」を推進するために,現状のデータを整理するとともに,仮説・検証のサイクルを進めるよう推進していく.非磁性体の振動発生装置については,現状では実現が困難であるために,現状の電磁モータ式の振動発生装置を用いてNIRSで計測する方式を主として用いる.心理物理実験とNIRSにより,特に以下の4つの項目について調査を進める.
(1) 運動錯覚を生じる被験者と生じない被験者の脳の賦活状態の比較
(2) 運動錯覚の強さを変化させた場合,運動錯覚の強さと脳の賦活状態の関係
(3) 腱の振動刺激が運動錯覚に変化するまでの過程(過渡応答)の観察
(4) RHIが運動錯覚に及ぼす影響

次年度使用額が生じた理由

非常勤の研究員は,脳計測に関する技術・知識を有しているために当該研究を進める上で,欠くことができない.当該研究を進めるために,非常勤の研究員を次年度も雇うために,予算の一部を次年度にまわした次第である.

次年度使用額の使用計画

次年度使用額は全額非常勤の研究員を雇うために使用する.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 卓上型運動錯覚誘発・評価装置の開発2014

    • 著者名/発表者名
      本多正計,唐川裕之,赤堀晃一,宮岡 徹,大岡昌博
    • 雑誌名

      日本機械学会論文集

      巻: 80-820 ページ: 1-12

    • DOI

      10.1299/transjsme.2014trans0350

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 振動刺激条件の相違が運動錯覚の誘発と知覚量に及ぼす影響2014

    • 著者名/発表者名
      本多正計,唐川裕之,赤堀晃一,宮岡 徹,大岡昌博
    • 雑誌名

      日本バーチャルリアリティ学会論文誌

      巻: 19-4 ページ: 457-466

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Estimation of Vibration Stimulus Threshold for Inducing Kinesthetic Illusion2014

    • 著者名/発表者名
      M. Honda, H. Karakawa, K. Akahori, T. Miyaoka and M. Ohka
    • 学会等名
      MHS2014 International Symposium on Micro-Nano Mechatoronics and Human Science (MHS)
    • 発表場所
      Nagoya University
    • 年月日
      2014-11-10 – 2014-11-12
  • [学会発表] 刺激腱の違いが誘発される運動錯覚の鮮明さに与える影響2014

    • 著者名/発表者名
      加藤祐規,本多正計,宮岡徹,大岡昌博
    • 学会等名
      第19回日本バーチャルリアリティ学会大会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2014-09-17 – 2014-09-19
  • [学会発表] 手関節進展運動錯覚の運動特性に与える振動条件の影響2014

    • 著者名/発表者名
      赤堀晃一,本多正計,宮岡徹,大岡昌博
    • 学会等名
      第19回日本バーチャルリアリティ学会大会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2014-09-17 – 2014-09-19
  • [学会発表] 運動錯覚を誘発させるための振動刺激閾値の測定2014

    • 著者名/発表者名
      本多正計,唐川裕之,赤堀晃一,大岡昌博
    • 学会等名
      第14回機素潤滑設計部門講演会
    • 発表場所
      信州松代ロイヤルホテル
    • 年月日
      2014-04-21 – 2014-04-22
  • [備考] 複雑系計算論講座 大岡研究室

    • URL

      http://www.ohka.cs.is.nagoya-u.ac.jp/~ohka/

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公開日: 2016-06-01  

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