研究課題/領域番号 |
26282164
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大岡 昌博 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (50233044)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 仮想現実感 / 運動錯覚 / ラバーハンドイリュージョン / 統合効果 / 感覚の制御 |
研究実績の概要 |
当該年度では,ステージ3「構成された仮設・理論に基づき運動錯覚の制御試験を行い理論の有効性を検証する」に取り組んだ。運動錯覚のモデルを構成するに先立ち、関連する錯覚現象としてベルベット・ハンド・イリュージョン(VHI)を取り上げ、30名の被験者によるfMRI実験を行い、Parametric Mapping(SPM)により解析して、その結果,ベルベット錯触に重要な物理パラメータ(棒間距離)と一次体性感覚野と小脳の活動に関連があることを明らかにした.この結果は, 一次体性感覚野と小脳のネットワークが素材感の生成に重要な役割を果たす可能性を示唆している。一方運動錯覚の実験では、MRIコンパチブルな材料による実験が今のところ困難であるために、NIRSを用いる実験に切り替え、fMRIで培った経験をNIRSの実験に活用した。NIRSの実験では、fMRIの解析で明らかにされた結果の一部を観測できた。すなわち、上述のfMRI実験で確認された中前頭回における賦活がVHI時に生じる現象が、NIRSによっても確認された。さらに、今年度は、本研究の主題である運動錯覚とラバーハンドイリュージョン(RHI)の融合効果について調査した。すなわち、RHIの効果をより明確にするために周囲の視覚情報を遮るような実験環境を整えて被験者10人による実験を行った。実験は、シェッフェの一対比較法浦の変法によって行われ、RHIが同時に呈示された方がヤードストックより高い値を得た。このようにRHIにより運動錯覚現象が強調される結果を得たため、RHIは運動野に関連する脳内ネットワークに刺激を加えることが可能であることが推察される。しかしながら、誘導される運動錯覚の強さには無視できない個人差があるために、本研究の仮説を検証するためには被験者を追加して研究を継続することが求められる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主題である運動錯覚とRHIの統合効果については、運動錯覚を促進させる効果があることが一連の心理物理実験により明らかにされた。この成果は、今後運動錯覚を利用したリハビリテーション、仮想現実感に展開する上で重要であると考える。さらに、運動錯覚とRHIの統合効果のメカニズム解明に役立てるために、NIRSを用いた脳の賦活調査の方法論を確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
運動錯覚とRHIの統合効果は、個人差があり本研究で得られた実験結果だけでは一流雑誌に投稿できるレベルに至っていない。今後、被験者を増やして実験を繰り返し、研究を継続する必要がある。また、NIRSを用いて統合効果のメカニズムの解明するために、運動錯覚時に生じる運動野の賦活の調査を継続して、統合効果を明確に示す実験データの蓄積を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
調達方法の工夫などにより、当初計画より経費の節約ができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
有名論文誌に投稿できるように、被験者をさらに10名ほど追加して本研究の実験を継続する予定である。経費は、そのための謝金や消耗品などの使用する予定である。
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