前年度得られた結果「ラバーハンドイリュージョン(RHI)により運動錯覚が強化される」に対して確証をえるために,RHIの程度の段階を増加して実験を前年度と同様に一対比較法浦の変法により継続実施した。その結果,前年度とはことなりRHIと運動錯覚の同時呈示の場合と運動錯覚単独呈示の場合の間の評価の差がヤードスティックより小さいために,前述の結論の確証が得られなくなってしまった。 そこで,一度ラバーハンドイリュージョンの呈示法の原点に立ち還り,映像の中の手を自らの手と取り違えるように思わせる手法に工夫することとした。すなわち,映像の手が刷毛で撫でられるのと同時に、その裏に位置する被験者の手を刷毛で撫でることを数分実施して,没入感を増加させることを試みた。 そのための実験装置として,モータドライブのXテーブルに刷毛を設置して、規定回数、規定速度で被験者の手を撫でるような実験システムを構築した。さらに,映像のスタートとXテーブルのスタートを合わせるために両者の制御プログラムをCode Blocksという心理学関連のプレゼンテーションシステムを用いて同期をとることを行った。以上のシステムとソフトウェアの動作確認を実施して予備実験を継続しているところである。結論が出るまでにあと半年程度の実験の継続が求められる。 さらに、運動錯覚が惹起されている間の脳の賦活状態を観察するために、近赤外線分光法(NIRS)のテストも実施した。このテストでは、fMRIによる結果と比較するためにベルベットハンドイリュージョン(VHI)を採用した。実験の結果、イリュージョンが生じているときに前頭前野が賦活していることが観察された。このテストにより、NIRSを運動錯覚惹起時の脳の賦活状態観察に使用できる目途をつけることができた。この成果は、日本バーチャルリアリティ学会大会で発表された。
|