研究課題/領域番号 |
26282167
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部) |
研究代表者 |
三ツ井 貴夫 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部), その他部局等, その他 (80294726)
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研究分担者 |
川村 和之 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部), その他部局等, その他 (10450959)
黒田 由紀子 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部), その他部局等, 研究員 (70398014)
有井 敬治 独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部), その他部局等, その他 (70644855)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 反復脊髄磁気刺激 / rTSMS / パーキンソン病 / 姿勢異常 / 腰曲がり / camptocormia |
研究実績の概要 |
パーキンソン病は代表的な神経難病であり、特徴的な運動症状に加えて多彩な非運動症状を呈する。疾患の進行と共に薬物の副作用や種々の合併症が併発する。これまで我々はパーキンソン病をはじめとした神経変性症に対し、新たな視点から特別なリハビリテーションを考案し、成果をあげている。その中で「腰曲がり」を含む姿勢異常は、薬物のみならずリハビリテーションに対しても改善効果が乏しいことが問題であった。 我々は腰曲がりを合併したパーキンソン病に対し反復脊髄磁気刺激(rTSMS)を行い、rTSMSが腰曲がりに即効することを見出した。この予備的検討では、脊髄に対し5Hz・1秒間の刺激を計8回でsham刺激に対して明らかに改善したこと、その改善は刺激直後からもたらされることが明らかになった。これらの予備的研究成果を踏まえ、本研究はまず、一ヶ月間継続的にrTSMSを行ったときにはさらにその効果が増強するか否かを検討する。効果の判定については、姿勢異常、姿勢反射機能、パーキンソニズムの運動症状・精神症状の普遍的な評価スケールで行う。後述するように、rTSMSは姿勢異常のみならず、運動機能自体を改善させる可能性がある。このことから、明らかな姿勢異常が見られないパーキンソン病患者についても、姿勢反射や種々の運動機能・精神機能に及ぼす効果を検討する。平成26年度は、予定通り生物統計専門家を交えて研究デザインの検討を行い、これをもとにプロトコールを確定した。対象としてパーキンソン病患者について、患者の募集を開始し(各群40名、合計120名を予定)、既に組みいれを開始し、研究がスタートしている。研究センターでブロック化層別割付によるグループ化を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パーキンソン病患者において、前傾姿勢はほぼ必発の症状である。中には強い姿勢異常をきたす症例があり、「腰曲がり」や「首下がり」と呼ばれ、これらの症状は種々の治療に抵抗性で、かつ進行性である。そのため患者は日常生活に著しい障害をきたし、活動性の低下とともに全般的な病状の悪化を助長することに繋がっている。我々はリハビリテーション研究を進める中で、「腰曲がり」や「首下がり」などの姿勢異常は薬物療法のみならず、リハビリテーションにおいても効果が乏しいことを実感していた。このため、「腰曲がり」や「首下がり」などの姿勢異常をターゲットした新たな治療法の可能性の検討を進めてきた。最近、我々は脊髄に対して反復磁気刺激(rTSMS)を行うことで、著明に腰曲がりが改善することを見出した。一般に、著明な姿勢異常を合併した段階のパーキンソン病患者においては、既に薬物療法は効果が十分ではなく、新たな薬物を追加したとしても、期待した効果が得られにくいことが多い。一方、我々はrTSMSを受けた患者は姿勢異常のみならずパーキンソニズムとしての運動症状が改善することを経験した。以上の知見を踏まえ、本研究ではパーキンソン病をはじめとした神経難病患者に対するrTSMSの効果を、姿勢異常、姿勢反射ならびに運動・精神機能の側面から検討することを計画した。平成26年度は、予定通り生物統計専門家を交えて研究デザインの検討を行い、これをもとにプロトコールを確定した。対象としてパーキンソン病患者について、患者の募集・組みいれを開始し、研究がスタートしている。これまでに得られた成績から、腰曲がりを合併したパーキンソン病患者は、rTSMSに加えてリハビリテーションを併用すると姿勢のみならず運動症状にも顕著な効果が見られることを観察している。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、パーキンソン病をはじめとした神経難病に対して、リハビリテーションを新たな発想のもとで精力的に取り組んでいる。特に、パーキンソン病において、薬物調整を行うのみならず、薬物治療だけでは限界のある症状に対し、従来の発想にとらわれずリハビリテーションを最大限に活用することを目指している。そして、その結果を高いエビデンス・レベルをもって発信していきたいと考えている。我々は、本研究でパーキンソン病患者に対し、4週間の反復脊髄磁気刺激(rTSMS)を行い、治療抵抗性である腰曲がりや首下がりなどの姿勢異常に対する持続的効果を検討すると共に、姿勢反射機能や運動機能・精神機能に改善効果があるか否かを厳密に評価する。さらに、有効な治療法のない他のパーキンソン病関連疾患や多系統萎縮症についても同様にrTSMSの効果を確認する。 平成26年度は、予定通り生物統計専門家を交えて研究デザインの検討を行い、これをもとにプロトコールを確定した。対象としてパーキンソン病患者について、患者の募集・組みいれを開始し、研究がスタートしている。 平成27年度以降は前年度の研究を引き続き実施すると共に結果を分析する。なお、統計学的解析は生物統計専門家に依頼し、客観性を担保する。さらに、平成28年度にかけては対象患者を進行性核上性麻痺患者および大脳皮質基底核変性症患者にも拡大し、同様の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、プロトコールが確定して、これを公的機関に登録することに、当初の予定より時間を要したため、対象の募集の開始が若干遅くなった。このため、一部の予定されていた支払いが年度を繰り越されることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は、精力的に対象患者の組み入れを行い、遺伝子解析を含めた診断ののち、rTSMSを実施し、解析を進めていく。
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