研究課題/領域番号 |
26282170
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岡出 美則 筑波大学, 体育系, 教授 (60169125)
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研究分担者 |
白旗 和也 日本体育大学, 体育学部, 教授 (20515184)
細越 淳二 国士舘大学, 文学部, 教授 (70365526)
大友 智 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (90243740)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 21世紀型学力 / 体育 / 学力 |
研究実績の概要 |
本研究では、1, 体育の学力をめぐる国外の研究成果を整理し、そこで示されている学力を構成する基本概念、習得が期待されている学習成果並びにそれらの評価方法を明かにすること、並びに2,小学校6年生並びに中学校2年生を対象に器械運動並びにボール運動(球技)の授業で期待し得る学習成果を学習指導要領の指導内容を踏まえ提案することを目的とし、平成28年度は次の通りの成果を得ることができた。 課題1に関しては、大学生を対象としたサッカーの授業にみられる技能並びに人間関係の改善過程についてアメリカで開催されたAISEPにおいて発表した。また、韓国の国立教育政策研究所を訪問し、韓国の学習指導要領に示されている体育の学力並びにその作成過程に関する情報を収集した。 課題2の技能に関しては、小学校2年生を対象としたゲームの授業並びに中学校2年生を対象としたバスケットボールの授業において、ゲーム中に発揮されるゲームパフォーマンスの変容可能性並びに期待できるゲームパフォーマンスについて検討した。この過程で、小学校2年生でも、コート上の空いている空間を見いだすことは比較的易しいこと、中学校2年生では、守備の位置で攻撃しやすい空間が変容すること、複数のボール非保持者の役割理解の必要性やその学習可能性が示唆されることとなった。 知識、思考・判断に関しては、授業者に対するインタビューを通して、対象授業以外にも知識や思考力・判断力の転移の可能性について確認した。実験的に実施した単元において児童が獲得したバウンズパスについてはドッジボールでその活用法が応用される等、単元を超えた転移の可能性が示唆された。 関心・意欲・態度に関しては、大学生で実施した授業の分析方法を踏まえ、小学校2年生のゲーム並びに6年生をボール運動の授業を対象に、児童の関心・意欲・態度に関わる、チーム内の役割の授業過程について検討を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インターネットのセキュリティ並びに個人情報の保護の問題もあり、ファイルサーバーを介した、実験校との情報の共有は困難であった。これを代替するために、実験校での打ち合わせを踏まえ、授業者の打ち合わせ、授業進行過程のモニタリングと情報交換、問題点の解決に向けた協議を重ねる形式を取った。 また、ゲームパフォーマンスのような技能に関しては、撮影された映像の分析で対応してきた。しかし、思考・判断、関心・意欲・態度に関しては、映像のみから学力の実態を把握することは難しく、フィールドノートの作成やそれを踏まえた児童の発話記録を修正版グランディッド・セオリーに基づき、質的に分析し、その変容過程を分析する手法を適用した。 その結果、役割の授業過程では、本人が役割受容に対して責任感を持てるように促すことや他の生徒や教師の役割期待の表明等が重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、1, 体育の学力をめぐる国外の研究成果を整理し、そこで示されている学力を構成する基本概念、習得が期待されている学習成果並びにそれらの評価方法を明らかにすること、並びに2,小学校6年生並びに中学校2年生を対象に器械運動並びにボール運動(球技)の授業で期待し得る学習成果を学習指導要領の指導内容を踏まえ提案することを、目的としている。 課題1に関しては、評価観点を踏まえたパフォーマンスの評価の例を、アメリカの文献を中心に再確認するとともに、その開発手法について整理する。特に、思考・判断に関しては、タクソノミーを踏まえて、再度、整理する。特に、指導内容となる知識とその習得を促す認知的活動の組み合わせという観点、さらには、評価課題と教育目標の区別を意識した学力概念の検討を進めることとする。 課題2に関しては、本調査2の結果を踏まえ、技能、知識・理解、思考・判断、関心・意欲・態度に関わる評価基準表の修正並びにその活用マニュアルを作成する。さらに、改訂版評価基準表に対応した単元計画、指導案並びに学習資料等を、研究者並びに研究協力校との協議に基づき進める。 平成29年度は、研究の最終年度であるため、各分担者の研究成果を整理し、報告書作成に取り組むこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者白旗に関して、調査先との日程調整ができず、一部、現地調査を実施することができなかった。また、人件費について、予定よりも安価で済んだため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に実施できなかった現地調査の旅費並びに収集した情報を整理するための補助者の謝金に充当する。
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