1. 前年度までに構築したスイマーロボットのシミュレーションモデルを用いて,身体各部に作用する流体力の詳細など,実験では測定困難な項目をシミュレータにより算出した.本算出は,実験を行った試技すべてについて行った. 2. 前年度までの実験結果と1のシミュレーション結果を合わせて詳細検討することにより,泳動作時の各局面において身体に作用する流体力の特性を明らかにした. 3. パフォーマンス的に改善の余地が見られたクロール泳について,さらなる性能向上のための検討を行った.具体的には,クロール泳においてリカバリー動作(腕を水上で後ろから前に戻す動作)が失敗して手が水中に入ってしまう現象が見られた.そこでこの失敗を防ぐため,泳動作の改善と,強制的なローリング制御の2種類の方策を考案し,それぞれの効果を検討した.まず泳動作の改善については,自由遊泳中の肩関節のモータの角度を計測したところ,目標値とは異なることが判明した.そこでモータの追従性を考慮し,より実現が容易な目標角度に修正を行った.また強制的なローリング制御については,ロボットの背部に倒立振り子状の制御機構を設け,モータで適切に駆動することにより,身体ロール角を変化させることを考案した.まずシミュレーションで効果を検証したところ,十分な効果が確認されたため,制御機構を実際に設計し,ロボットに取り付けた. 4. 上記の改善を施したロボットでの自由遊泳実験を行った.その結果,泳動作の改善のみを行った場合が最もパフォーマンスが高く,これまでの泳速度0.23 m/sを大幅に上回る,泳速度0.33 m/sを達成した.また強制的なローリング制御については,機構を動作させると効果は見られたものの,機構自体を取り付けない方がパフォーマンスが高くなることがわかった. 5. 国内外の関連会議に参加し,最新の資料収集や情報収集,および成果発表を行った.
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