研究課題/領域番号 |
26282176
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
村越 真 静岡大学, 教育学部, 教授 (30210032)
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研究分担者 |
山本 正嘉 鹿屋体育大学, その他部局等, 教授 (60175669)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 登山 / リスク / 山岳遭難 |
研究実績の概要 |
研究の準備段階である25年度に収集したデータに26年度に収集した山岳遭難統計原データを加え、国立登山研修所の研究報告に概要を報告したことに加えて、疫学的な分析方法により遭難態様に影響する要因を分析中である。予備的な検討から、年代・性別・山域に特異な遭難態様があることが明らかになった。 26年度より継続して低山におけるヒヤリハット調査を実施した。実施エリアは関東の代表的な低山である奥多摩に加え、阿蘇、富士山周辺であった。これにより約220件の低山ヒヤリハットが収集できた。現在収集中のものと併せて約300件の予定通りの低山ヒヤリハットが収集できる。 9月には、イギリスを訪問し、登山研修所およびスコットランドのハーベイマップサービス、ナショナルナヴィゲーションアワードスキーマを訪問した。この訪問により、山岳教育の先端国の一つであるイギリスの登山研修の実態や山岳遭難を減少させるためのナヴィゲーションスキルの提供方法やその組織的体制について調査を行った。この結果は登山研修に報告した。 また共同研究者の山本は、登山者の体力を簡易に測定する方法についての研究を進め、その成果はインターハイ山岳部のヒヤリハット事例の分析に活用された。その成果は登山医学に発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
27年度実施予定であったウェアラブルカメラによる実態把握と登山研修所の研修会におけるヒヤリハット調査が実施できなかった。ウェアラブルカメラによる実態把握については、27年度末に登山中の行動をどの程度的確に把握できるかの検討を開始したので、28年度前半には実際のデータ収集ができると予定している。また研修会におけるヒヤリハットについては、申請者が28年度に研修会の主任講師を務めることになったことから、客観的な体力テストも含めて、28年度に実施できるめどが立っている。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は、収集したヒヤリハットデータを分析し、高山と低山のヒヤリハットとそれに関連する要因の特定を行う。またトラブル発生へのプロセスについても特定する。さらに山岳遭難データや過去のデータベース(たとえば青山・日本山岳レスキュー協議会,2004)と比較することで、遭難につながらなかったトラブルはどのような性質を持つのかを検討する。 また国立登山研修所主催により全国規模で開催される中高年安全登山研修会(東西)で簡単なテストと質問紙によって、登山者の登山スキルの実態とこれまでのヒヤリハット(および遭難)の実態を明らかにすることで、やはり遭難・トラブルにつながる要因の把握を試みる。この方法では特に客観的に把握された体力的な特性と転倒の関連が明らかになることが期待される。これらにより、これまで十分に明らかになっていないが、発生比率の高い転倒や滑落について、遭難発生のファルトツリーが明らかになると期待できる。 得られた結果は、国立登山研修所の専門調査委員会、その他山岳遭難に関心を持つ関係者に提供し、議論することを計画している。これにより遭難防止のためのエビデンスに基づく対策づくりに寄与することが期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
低山におけるヒヤリハット調査で十分なデータ数が得られず継続したこと、ウェアラブルカメラのテストが継続したため、その謝金が未支出であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
ウェアラブルカメラによる実態把握については、27年度末に登山中の行動をどの程度的確に把握できるかの検討を開始したので、28年度夏には実際のデータ収集ができると予定している。またヒヤリハットはデータ収集は終了したので、本年度の早い時期に支出となる。それ以外については、登山研修所主催の講習会でのデータ収集および分析の謝金、登山界の有識者との議論の場の設定のための旅費・謝金、研究成果公表のためのウェブサイト構築等に支出予定である。
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