研究課題/領域番号 |
26282180
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
後藤 一成 立命館大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (60508258)
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研究分担者 |
片山 敬章 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (40343214)
荻田 太 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (50224134)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 低酸素 / 運動 / 糖代謝 / ホルモン / インスリン感受性 |
研究実績の概要 |
研究1:低酸素環境下(酸素濃度15.0%)で行う一過性の運動が、運動中や運動後のエネルギー代謝や糖代謝に及ぼす影響を検討した。男性8名を対象に、運動には最大酸素摂取量の60%に相当する強度での30分間のペダリングを用いた。同一被験者に対して、低酸素条件下または通常酸素環境下でそれぞれ異なる日に測定を実施した。その結果、運動後の食事摂取に伴う血中グルコース濃度や血清インスリン濃度の変化の動態に、低酸素環境下と通常酸素環境下の間で有意な差は認められなかった。このことから、低酸素環境下で行う食前の有酸素運動による食後の血中グルコース濃度上昇の抑制作用は確認されなかった。
研究2: 女性7名を対象に、低酸素環境下で行う高強度運動に伴う血中グルコースや乳酸濃度、エネルギー代謝(酸素摂取量、二酸化炭素産生量、呼吸交換比)、主観的空腹感の変化を検討した。その結果、高強度運動に伴い血中グルコースおよび乳酸濃度はいずれも有意に上昇したが、これらの変化の動態には低酸素環境下と通常酸素環境下で有意差は認められなかった。また、運動終了後における炭水化物の利用割合(エネルギー産生に対する炭水化物の貢献度)や主観的空腹感の変化にも、条件間で差はみられなかった。これまでの研究では、低酸素環境下での運動時には炭水化物の利用割合の亢進することが複数報告されている。一方、本研究の結果をふまえると、低酸素環境下での有酸素運動に伴う炭水化物の利用割合の亢進(糖代謝の亢進)には運動強度が強く影響し、糖代謝亢進の恩恵を得る上では中強度での有酸素運動が適切であると考えられた。
研究3: 2型糖尿病患者を対象に低酸素吸入下での血糖調節の変化を検証するために(平成27年度に実験を実施予定)、対象者の選定基準(HbA1cのレベル、投薬条件など)に関して、協力先機関と議論を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低酸素環境下での運動に伴う糖代謝(炭水化物の利用割合)の亢進には、運動強度が強く影響することを明らかにすることができた。これは次年度以降、2型糖尿病患者を対象に低酸素環境下での運動効果を検証する上できわめて重要な知見である。一方で、当初は平成26年度内に2型糖尿病患者若干名を対象に、低酸素環境下での血糖調節を事例的に検討する予定であった。しかし、研究結果が対象者の選定基準により異なる可能性が考えられたために、今年度は対象となる患者の血糖プロフィール(HbA1cレベル、投薬状況)を糖尿病治療に携わる臨床医からの助言をもとに精査することに専念をした。以上の諸点から、研究計画は概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、平成27年度以降は2型糖尿病患者を対象に、低酸素環境下での軽運動が血糖調節や内分泌動態に及ぼす影響をまずは事例的に検証する予定である。その後、対象人数を拡大した上で、低酸素環境下で行う継続的な運動・トレーニングの効用を検証する。これらの研究を遂行する上では医療機関の協力が必須であるために、現在進行している連携を継続していくことが重要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度実施の2型糖尿病患者を対象にした研究の予備調査に必要な消耗品を購入する予定であったが、今年度は対象者の選定条件を精査するのみとなった。そのために、当該消耗品購入に関わる研究費(8,288円)は、次年度に使用することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
当該調査は平成27年度に実施することから、当初予定をしていた金額を使用する予定である。
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