研究課題
老化や閉経に伴う骨粗鬆症患者数は1000万人といわれ、高齢化社会をむかえて、その患者数は増加し続けている。この治療・予防に運動のような力学的刺激は有効であると報告されている。しかしながら、力学的刺激の強い運動(レジスタンス運動)による骨代謝・骨形態変動についてのメカニズムは明確にされていない。これは、動物に運動負荷することの難しさが一因と考えられる。私は、このメカニズムを検討するために、ラットがヒトと同様に直立運動をおこなうスクワット運動と非侵襲的にレジスタンス運動をおこなうクライミング運動を開発した。また、神経伝達物質受容体(アドレナリン受容体)とイオンチャネルの一種でペースメーカーチャネルと呼ばれるHCN、ライソソーム膜上イオンチャネルTPC2の骨代謝機構における役割を明らかにしてきた。これらの結果は、骨の細胞間で脳神経と類似した情報伝達の存在を示唆している。そこで、現在までの結果に基づいた神経伝達物質受容体・イオンチャネルを介した細胞膜電位変化を伴う力学的刺激による骨代謝機構の解明を目指す。本年度では、FLIPRスクリーニングによる力学的刺激に応答する細胞膜上分子の探索および現在までに同定している分子の解析をおこなった。FLIPRスクリーニングでは、膜電位の変動を指標として分子の同定をおこなっているが、新たな標的分子Xを同定して、検証をおこなっている。また、現在までに同定している分子の細胞膜電位との関係を検討するために、骨関連細胞に膜電位操作分子を導入して、膜電位の役割を検討するとともに、力学的刺激に応答して変動する膜電位の役割をあわせて検討した。その結果、同定した候補分子の膜電位および力学的刺激伝達機構における調節機能を認めた。非興奮性細胞における膜電位変動の重要性も本結果から明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
FLIPRによるスクリーニングも順調に進んでおり、現在までに同定している候補分子の機能探索も進行している。また、細胞膜電位との関係では、光操作分子を用いて、検証をおこなうことで、細胞膜電位と候補分子との関係性についてのデータが得られている。
力学的刺激伝達機構との関係について、培養系での力学負荷モデルを用いて詳細に検討していく。また、神経系との直接関係について検討するために、遺伝子欠損マウスの作製・導入を進めており、完了後に運動負荷モデルを用いて、In vivoでの関係性を検討していく。
2014年4月より、大阪歯科大学に異動のため、動物実験計画書の認可まで時間を要したことと、大学の実験補助員雇用制度改定のために実験補助員の雇用が遅れたためである。具体的には、動物実験の開始時期の遅れのために、消耗品費が少なくなったことと、研究補助員雇用の遅れのために、実験量の減少に応じて、人件費・消耗品費の減少が生じた。
実施できなかった動物実験計画を予定に組み入れて、前年度に計画していた通り、消耗品費(試薬・培養器具・実験動物)にあてる予定である。また、一時停止していた実験計画を速やかに推進するために、実験補助員増員のための短期雇用に充てる
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J Cell Biochem
巻: 116 ページ: 142-148
Bone
巻: 65 ページ: 42-48