研究課題/領域番号 |
26282183
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
増田 和実 金沢大学, 人間科学系, 教授 (50323283)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 筋細胞 / 代謝 / ミトコンドリア / ミオグロビン / 運動 |
研究実績の概要 |
筋細胞内のMb量の多寡がミトコンドリアの呼吸活性に及ぼす影響については明らかにされていない。さらに、ミトコンドリアに内在するMbによる呼吸活性への貢献については全く検証が及んでいない。 そこで平成26年度では、Mb単独の影響を確認するために、Mbを安定的に過剰発現する培養細胞の樹立を進めた。Flagタグ付きMb発現ベクターを構築後、C2C12細胞にトランスフェクションした。この発現ベクターにはIRES配列を介してGFPも発現させることができるので、GFPを遺伝子導入の成否を判断する可視的なレポータとして観察した。また、遺伝子導入によって発現するFlagエピトープタグを融合させたMbも生化学的に確認した。分化誘導して得られた筋管細胞を回収し、ホモジナイズした。そのサンプルからFlag抗体によって特異的にMb-Flagを免疫沈降し、沈降サンプルを電気泳動によって分離し、ImmunoblottingによってMbやミトコンドリア構成タンパク質を検出した。分析の結果、Flagの免疫沈降サンプルからCOX-IVが検出された。COX-IVはミトコンドリアの複合体4を形成するサブユニットの1つであるので、C2C12細胞で強制発現させたMbがミトコンドリアにも局在していることが示された。また、Mbのミトコンドリアの相互作用の機能的意義を検証するため、高感度酸素電極を搭載した細胞代謝計測機を用いて、筋細胞のミトコンドリア呼吸活性(酸素消費速度)を計測する方法の確立を図った。ミトコンドリア呼吸活性の測定には培養筋芽細胞(C2C12)を対象とし、添加基質を変えることによってミトコンドリア呼吸鎖複合体毎に活性を評価した。樹立したFlag-Mb過剰発現細胞では呼吸活性が亢進する結果が得られた。次年度では、呼吸活性や酵素活性を含める表現型の変化について詳細に検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年ではMbを安定的に過剰発現する筋細胞を確立することができた。また、その細胞のミトコンドリアタンパク質やMb量など、遺伝子改変細胞の特性も確認することができた。さらに、機能的変化を検証するシステム(高感度代謝測定機)を導入し、その稼働と分析方法の確立を進めつつ、培養細胞を用いてMbの多寡による細胞呼吸機能の変化を検証することができた。これらの推進事項は当初予定していた推進項目であり、次年度にさらに分析の積み上げを行うつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
〔Mbに相互作用するミトコンドリアタンパク質の同定〕 平成26年度の研究内容を継続しつつ、更に詳細に呼吸活性に関する表現型の変化について検証を進める。また、樹立したStable C2C12を用いて共免疫沈降法(Co-IP)やプルダウンアッセイなどによってMbとミトコンドリアの共局在の有無を検討する。また、ショットガン解析(質量分析)によるミトコンドリア関連タンパク質の探索:プロテオーム解析を試みる。我々のこれまでの経験では、Mycタグ付きMb過剰発現L6を用いた質量分析では、Myc-Mbの沈降物からミトコンドリア関連タンパク質が検出された。ただし、L6にはミトコンドリアが少ないことやMyc-Mbの回収効率が疑われたために、本研究ではC2C12への変更(L6→C2C12)と、タグの変更(Myc→Flag-タグ)によって安定的な実験結果を得ることを目指す。プロテオーム解析を通じてMbがどのようなミトコンドリア関連タンパク質と相互作用し、複合体を形成しているのか検証する。また、同定されたタンパク質の過剰発現(発現ベクターの導入)や発現抑制(shRNAの導入)のC2C12を作成して、Mbとの相互作用の有無がミトコンドリアの機能に及ぼす影響を検証する。さらに、平成28年度の研究内容(骨格筋Mbの発現調節機構)についても可能な限り検証を進める予定である。 なお、我々は摘出骨格筋においてMbとミトコンドリアの複合体IVを構成するCOX IVとの相互作用の可能性を推測している。Mbとミトコンドリア関連タンパク質を同定することは、Mbが持つ新たな生理機能を相互作用の視点から明らかにできることを期待している。
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