平成27年度までの研究内容を継続しつつ、新たにMbの局在場所について検証を試みた。ミトコンドリアを単離したサンプルを段階遠心法とショ糖勾配分離法の組み合わせによって、ミトコンドリアを外膜/膜間腔/内膜/マトリックスに分画を行った。その上で各画分におけるMbの存在をウエスタンブロット法によって検討した。その結果、Mbが膜間腔とマトリックスに検出された。マトリックスに検出されたことは仮説に反していたため再検証の必要性があるものの、Mbの一部がミトコンドリアの内部に取り込まれている可能性が示唆された。また、今回の段階遠心法によるミトコンドリア分画実験は、これまでの種々の実験結果を通じて認められてきたMbとミトコンドリアの特定タンパク質との相互作用を支持する状況証拠として重要な意味を持つと考えられた。さらに、Mbの発現調節機構についても検証を実施した。ラット骨格筋培養細胞株(L6)細胞を用いて、24時間/日×5日間のAICAR刺激とカフェイン刺激を施し、ミトコンドリアタンパク質やMbタンパク質の発現変化を検証した。カフェイン刺激はカルシウムシグナルを亢進させ、ミトコンドリア生合成およびMbを上昇させた。一方、AICAR刺激では想定されたAMPKが活性化させず、その下流のミトコンドリア生合成やMbを亢進させなかった。したがって、Mbはカルシウムシグナルに応答して発現を亢進させることが明らかになったが、カフェイン刺激によるタンパク質分解亢進の可能性が推察されたため、今後、運動模倣薬としてのAICARやカフェインの使用条件を精査しながら細胞内シグナルの賦活化とタンパク質発現を評価する必要がある。最後に、本研究の3カ年の成果を取りまとめ、成果報告を作成した。
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