研究課題
本研究の目的は、運動疲労の神経基盤を統合的に解明することである。平成23~25年度基盤研究(B)「運動疲労時における中枢制御機構の統合的解明」において、抑制システム、促進システム、疲労感などの運動疲労関連因子の神経基盤を個々に明らかにした。本研究ではさらに進めて、動的で相互依存的な側面を持つ運動疲労の中枢神経系制御機構に対して、脳磁図装置を用いて詳細に検討することで、運動疲労の神経機構を統合的に解明する。本年度は、健常者を対象として、精神的疲労を想起した状態での運動疲労の抑制・促進システムの相互作用について検討し、その神経学的基盤を明らかにした。健常被験者に対して、精神的疲労負荷による疲労困憊状態を想起させた上で、抑制システムを賦活させるセッション、促進システムを賦活させるセッション、およびコントロールセッションを3試験区クロスオーバーデザインで実施した。なお、研究の遂行に当たっては、被験者のプライバシーに十分配慮し、大阪市立大学倫理委員会の承認の後、被験者の同意を得たうえで実施した。周波数解析を用いて、抑制システムおよび促進システムの脳活動を評価したところ、運動疲労を想起した状態では前頭前野においてα周波数帯域事象関連同期および脱同期を、それぞれ認めたが、精神的疲労を想起した状態でも同様に、α周波数帯域事象関連同期・脱同期が認められた。本研究により、これまで別々に同定されていた抑制システムと促進システムの神経基盤、さらには、運動疲労と精神的疲労の神経基盤を、動的・相互依存的に解明された。これらの成果は、運動疲労のみならず、精神的疲労の神経機構を統合的に解明する上で、非常に意義深いものであると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、健常被験者に対して、精神的疲労負荷による疲労困憊状態を想起させた上で、抑制システムを賦活させるセッション、促進システムを賦活させるセッション、およびコントロールセッションを3試験区クロスオーバーデザインで実施した。本研究によって、これまで別々に同定されていた抑制システムと促進システムの神経基盤、さらには、運動疲労と精神的疲労の神経基盤を、動的・相互依存的に解明され、当初の計画どおりに順調に研究が進捗していると考えられる。
我々のこれまでの脳磁図を用いた疲労研究より、慢性疲労の神経機構を明らかにしてきた。しかしながら慢性疲労の運動疲労に対する影響の解明までには至っていない。本研究では、慢性疲労者および健常被験者を対象として、運動による疲労困憊状態を想起させる実験を行い、慢性疲労の、運動疲労に対する影響を検討し、その神経学的基盤を明らかにする。健常者および慢性疲労者を対象としたデザインで試験を実施する。運動疲労課題である、PC画面上に出現する「運動による疲労困憊状態の画像」の凝視→「最大の力でのハンドグリップ」の想起を150回程度、参加者に実施させる。運動負荷課題前後で、脳磁図検査を実施し、慢性疲労の運動疲労に対する影響について検討する。平成26年度および27年度と同様、本研究実施体制の構築に必要な人材(研究協力者)として、大阪市立大学大学院・医学研究科・病院講師の石井聡と、同特任助教の山野恵美が挙げられる。
本年度の脳磁図試験の結果を見直したとき、次年度予定している脳磁図試験に加えて、さらなる試験を追加する必要性が生じたためと、本年度の結果を論文として数本執筆中であるが、その論文の英文校正や掲載料が必要であるため。
次年度予定している脳磁図試験に加えて、さらなる試験を実施するとともに、論文執筆を進め、英文校正や掲載料を支払う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 12件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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