ここ数10年の急速な技術革新や高度情報化、グローバリゼーションの進展によって日本人労働者が抱える仕事のストレスは増大している。厚生労働省が最近発表した労働者の健康状況調査(2012年)によると、「強い不安、悩み、ストレス」がある労働者は再び6割を越え、下方硬直性がうかがえる。このような現状の慢性化は労働者のうつ病や自殺者の増加に拍車をかけ、結果的に労働生産性の低下の遠因となっている。一方、2015年より企業では仕事のストレスを把握するストレスチェック制度が義務化されたが、それはあくまでも主観的な調査票を用いた方法であり客観的な物差しによる評価が必要である。そこで、本研究は、男性労働者を対象に職業性ストレスに対する鋭敏な免疫指標を開発することを目的とした。 本研究の具体的な目的は、職業性ストレスの免疫系に対する影響を縦断的に明らかにすること、職業性ストレスを鋭敏に検出するサイトカインを網羅的に探索すること、職業性ストレスのサイトカインネットワークメカニズムを解明することの3点である。本研究のこれまでの実績として、企業従業員延べ2000名程度を定期健康診断時に調査し、同時に新しく開発したストレス調査票、サイトカイン10種類、高感度CRP、コレステロール、HbA1c等の血液指標を2年分収集し、解析を行った。その結果、職業性ストレスは炎症性サイトカインIL-6やIL-8ならびに高感度CRPと関連し、主観的健康感はIL-6ならびに高感度CRPと関連することが明らかとなった。縦断データは現在、解析中である。
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