前年度、中等度負荷や高負荷のトレッドミルランニングでは血中OSM濃度に変化は認められなかったため、今年度、より高負荷の運動(疲労困憊運動)を施行したところ、下腿や大腿の骨格筋において中等度負荷時や高負荷時よりも顕著なOSMの発現の増加がみられ、また、血中OSM濃度の増加も認められた。以上の結果より、運動負荷の強度の増加に伴い、骨格筋におけるOSMの発現が増加し、血中OSM濃度の上昇に繋がることが明らかとなった。 ob/obマウスは脂肪肝を発症するが、NASHには進行しないことから、OSMR欠損ob/obマウスを作製し、脂肪肝からNASHへの進行に対するOSMシグナルの関与の有無を検討したが、ob/obマウスとOSMR欠損ob/obマウスの肝での炎症細胞浸潤や線維化の程度に差は見られなかった。 肝類洞内皮細胞に対するOSMの作用を検討するために、自動磁気細胞分離装置を用いて肝類洞内皮細胞を分離し、50 ng/mlのOSMで1時間刺激した。類洞内皮細胞活性化のマーカーであるiNOSや肝類洞内皮細胞の毛細血管化に重要なLXRαの発現を検討したが、OSM刺激による発現変化は認められなかった。 前年度、NASHモデルマウス(ob/obマウスのメチオニン/コリン欠乏食給餌モデル)に対して軽度の運動負荷を行ったが、血中OSM濃度の増加は認められなかったため、本年度は中等度の運動負荷を試みたが、このNASHモデルマウスにとっては過負荷で、完走することができなかった。また、このNASHモデルマウスにOSMを一週間投与し、骨格筋における遺伝子発現を検討したところ、CD206やarginase-1、及びIL-10などのM2型マクロファージのマーカーの発現増加が認められたことから、OSMはNASH時の骨格筋マクロファージに作用し、抗炎症作用を有するM2型へシフトさせる可能性が示唆された。
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