研究課題
申請者は、水素分子(H2)が新しい概念の抗酸化物質であることを証明し、世界に水素医学を提唱した。その後、様々な酸化ストレスによるモデル動物ほとんど全ての臓器と病態において顕著に効果的であり、水素には炎症抑制作用、抗アレルギー作用があり、さらにエネルギー代謝促進作用があることが判明した。これらの水素の多機能性の作用は、健康増進と疾病の予防に寄与することが想定される。このような様々な病態に対し多様な機能を発揮する際には、水素は遺伝子発現の制御を行っていることが判明した。しかし、水素が直接転写制御因子に作用するとは考えにくいので間接的な作用であることが予測された。そこで、水素が多機能を発揮する分子メカニズムを解明するのが本研究の目的である。当初の実感計画では、ヒストンのアセチル化によってクロマチン構造が変化し、エピジェネティックな作用として炎症性サイトカインを含めた遺伝子発現を促進する。逆にヒストン脱アセチル化酵素(HDAC2)は脱アセチルを促進し、炎症性サイトカインを含めた遺伝子発現を抑制する。HDAC2はニトロ化によって酵素活性が低下することが知られており、水素はHDAC2のニトロ化を低下させることでヒストンのアセチル化を抑制し、炎症性サイトカインの発現を抑制することを証明する。しかし、平成26年度には、水素が低濃度でフリーラジカル連鎖反応に介入して、脂質メディエーターを改変して、その改変脂質メディエーターが細胞内シグナル伝達を制御することを明らかにした。その結果、当初の作業仮説とは異なる経路が存在することが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
水素が様々な病態に対し多様な機能を発揮する際には、水素は遺伝子発現の制御を行っていることが判明している。しかし、水素が直接転写制御因子に作用するとは考えにくいので間接的な作用であることが予測される。そこで、水素が多機能を発揮する分子メカニズムを解明するのが本研究の目的である。当初の計画以外に、平成26年度には、水素が低濃度でフリーラジカル連鎖反応に介入して、脂質メディエーターを改変して、その改変脂質メディエーターが細胞内シグナル伝達を制御することを明らかにした。当初の作業仮説とは異なる経路ではなるが、目的は達成した。今後は、今回明らかにされた経路以外にも別の経路があることを明らかにする。本来の目的の達成度は、十分であると言える。
水素が脂質メディエーターを改変することは明らかになったが、その分子種は同定させていないので、水素によって変化する脂質メディエーターを同定する。そのために、生体内リン脂質の代表的なPAPC((1-パルミトイル-2-アラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン)をin vitroにおいて水素存在下で酸化させ、新しく生じる改変酸化PAPCをつくる。その水素存在下で合成された改変酸化PAPCが、酸化PAPCによって生じるシグナル伝達系の阻害をすることを検出する。その相関関係から、水素が制御するシグナル伝達物質を同定する。さらに、炎症によって、脂質メディエーターが生じることが明らかにされているので、水素によって変化する脂質メディエーターを同定する。脂質メディエーターの変化によって説明できない系について、本来の目的を達成するために、以下の実験系を組む。Nrf2は酸化ストレスに応答して抗酸化ストレス酵素を発現させる転写制御因子である。水素は、脱アセチル化酵素のニトロ化を抑制して活性化することによってNrf2の脱アセチル化をうながしNrf2の活性を増強し、長期にわたり酸化ストレス耐性を可能にすることを証明する。そのためには、SIN-1またはSNAPによってONOO−を発生させ、水素存在下と非存在下で、Nrf2のアセチル化の程度を免疫沈降法とWestern Blotを組み合わせて調べる。
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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