研究課題
水素の生体への抗酸化作用とその他の様々な作用は、多くの研究によって確立されている。さらに、水素には当初想定していた短時間の抗酸化作用だけでなく、長時間にわたり抗酸化作用を維持し、炎症抑制作用、抗アレルギー作用があり、さらにエネルギー代謝促進作用があることが判明した。これらの作用は、健康増進と疾病の予防に寄与することが予想される。そこで、本研究では、水素が多機能を発揮する分子メカニズムを解明することを目的とした。精製されたPAPC(1-パルミトイル-2-アラキドノイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン)をフリーラジカル連鎖反応によって化学的に酸化するときに、水素を存在させると、酸化PAPCによる培養細胞への細胞内情報伝達を担うカルシウムの流入が低下した。さらに、網羅的遺伝子発現解析によって、水素存在下で酸化されたPAPCは様々な遺伝子発現を変化させることを明らかにした。さらに、培養細胞でフリーラジカル連鎖反応を人為的に生じさせる時に、水素が存在するときに、カルシウムの流入の低下が認められた。カルシウムの流入の低下によりNFATと呼ばれる転写因子の活性を低下させ、様々な遺伝子発現を制御しうることを明らかにした。また、別の経路としては、水素がフリーラジカル連鎖反応に介入して、ヒドロキシノネナールを減少させ、いくつかの情報伝達因子のリン酸化を経て、転写因子活性化因子PGC-1αを増加させ、脂質代謝系酵素を増加させる系があることを明らかにした。このように水素が間接的に遺伝子発現を制御するメカニズムを明らかにした。水素は、不活性であるが故に、酸化ストレスがないときは効果を発揮しないが、フリーラジカル連鎖反応が亢進しているときのみに、効果を発揮することが示唆された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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