研究課題
進化論のダーウィン以来の謎とされる就眠運動については、アメリカネムノキ(Samanea saman)をスタンダード植物として多くの生物学的研究が行われている。申請者等は、JAG が植物運動細胞にセカンドメッセンジャーとして活性酸素種(ROS)の発生を引き起こすことを明らかにし、運動細胞のトランスクリプトーム解析から放出型カリウムチャネルSPORK2を就眠運動に関与するチャネルと推定した。本研究において、SPORK2がユニークな速度論的性質を持つ外向きカリウムチャネルであることを解明し、運動細胞のパッチクランプ実験から、アメリカネムノキの就眠運動に主に寄与することを示した。これを実証するための非モデル生物であるアメリカネムノキでのノックアウト実験系の構築、ならびにモデル生物系への展開と生物種普遍性を証明するための予備実験を行った。JAGによるSPORK2チャネルの活性化機構へと研究を展開する。
2: おおむね順調に進展している
本研究において、SPORK2がユニークな速度論的性質を持つ外向きカリウムチャネルであることを解明し、運動細胞のパッチクランプ実験から、アメリカネムノキの就眠運動に主に寄与することを示した。また、非モデル生物であるアメリカネムノキでのノックアウト実験系の構築、ならびにモデル生物系への展開と生物種普遍性を証明するための予備実験を行っており、順調に成果を得ている。
今後は、SPORK2発現量の概日性リズムに従った変動と、その生理的意味に関する研究を進めるとともに、ジャスモン酸グルコシドによるその活性化を検討する。また、トランスクリプトーム解析から、SPORK2遺伝子の発現に伴って発現変動する輸送体遺伝子を発見しており、これがジャスモン酸グルコシドに対する輸送活性を示すとの予備実験結果を得ている。これは、ジャスモン酸グルコシドとSPORK2活性化の間の強い相関を示すデータであるため、これについても今後検討を行う。
昨年度研究において、アメリカネムノキにおける遺伝子破壊実験に関する予備検討を行ったが、既存の方法ではいずれも実験が成功せず、新規方法論の開拓を行う必要が生じた。また、これと並行して、2015年末に新規公開されたモデル植物データベースにおいて、SPORK2とホモロジーの高いイオンチャネルが含まれることが分かった。これらの事由から、モデル植物におけるホモロガス遺伝子の破壊実験、ならびに新規なウィルスベクターによるRNAi実験の二通りの方法でのSPORK2のヴァリデ-ション実験を行うことになったが、いずれも準備に長時間を要するため、年度内に実験が開始できなかったため、次年度使用額が生じた。
モデル植物におけるホモロガス遺伝子の破壊実験、ならびに新規なウィルスベクターによるRNAi実験の二通りの方法でのSPORK2のヴァリデ-ション実験に関する準備は、いずれも既に昨年度中に完了しており、既に植物の育成を開始した。このため、遺伝子変異植物体が得られ次第、これを用いた実験を速やかに行い、年度内に全ての研究費を使用する予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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