研究課題/領域番号 |
26282210
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
森田 洋行 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (20416663)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ポリケタイド / 立体構造解析 / 酵素工学 / アルカロイド |
研究実績の概要 |
アサ由来オリベトール酸閉環酵素(OAC)は、アサのⅢ型ポリケタイド合成酵素(PKS)がヘキサノイルCoAと3分子のマロニルCoAから生産するテトラケタイド中間体に作用して、カンナビノイドの生合成中間体オリベトール酸へと閉環する全くあたらしいタイプの新規閉環酵素である。本研究では、様々な骨格を有するアシルCoAエステルとマロニルCoAを基質とした触媒タイプの異なるⅢ型PKSの酵素反応液にOACを加えることにより、新規化合物の生産を目指した。その結果、ヘキサノイルCoAとマロニルCoAを基質としたキダチアロエ由来オクタケタイド合成酵素(OKS)とOACの共反応液中に、OAC共存下においてのみ生成する新規化合物の存在をLC-MS解析によって見いだした。その分子量から、本生成物はヘキサノイルCoAに6分子のマロニルCoAが縮合して生成したビフェニルまたはナフタレン類縁体であると考察される。一方、ヘキサノイルCoAよりも炭素鎖の短いブチリルCoAや炭素鎖の長いオクタノイルCoA、クマロイルCoAやアントラニルCoA等の芳香族CoAをヘキサノイルCoAの代わりに作用させた場合には、いずれにおいても新規化合物の生成を確認することができず、OACの基質特異性はヘキサノイル基に特化していることが強く示唆された。そこで、OACの基質特異性と触媒機構の解明を目指し、OACのX線結晶構造解析を行った結果、1.4オングストロームの分解能でOACアポ型の結晶構造の取得に成功した。今後、これら立体構造情報の活用により、OACの詳細な触媒機構の解明と、OACの機能改変およびそれら機能改変酵素を用いた新規化合物群の創出が期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画においては、様々なタイプのⅢ型PKSとOACやそのホモログ酵素を組み合わせ、これに様々な骨格のアシルCoAをマロニルCoAとともに作用させ、新規化合物を生産することを達成目標としていた。今年度の課題実施において、構造決定を決定するまでには至っていないものの、新規化合物の生産を確認することができている。また、本年度中に次年度に予定していたOACアポ型の結晶構造の取得まで至っており、総合的に概ね計画通りに進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度において得られた新規化合物の構造決定を早急に進める。同時に、OACと基質アナログや生成物との複合体結晶構造の取得にも取り組み、OACの基質特異性や触媒機構の詳細を明らかにする。この際には、その情報に基づき変異を導入し反応生成物を精査することで立体構造との整合性を図るとともに、多様な構造の基質に対する基質特異性についても検討し、基質特異性等の改変も含めて行うことにより新規化合物群の創出を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
基質の合成で用いる試薬の在庫がなく当該年度中に購入できなかったため、その費用が次年度使用となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用となった当該助成金はこの試薬の購入に充てる予定である。
|