研究課題/領域番号 |
26282215
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀 雄一郎 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00444563)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | PYPタグ / ハイブリッドプローブ / メチル化DNA |
研究実績の概要 |
生細胞でDNAメチル化を解析する方法の開発は、DNAメチル化のダイナミクスを明らかにするうえで極めて有用であるものの、その方法は蛍光蛋白質を用いた方法に限られている。この方法では、メチル化DNAに特異的に結合するMBDと蛍光蛋白質を融合させ、その局在を解析する。しかしながら、メチル化DNAに結合していない融合蛋白質からも蛍光が観測されるため、厳密にメチル化DNAの局在を解析するうえで大きな問題となっている。 そこで、本研究では、この問題を解決するために、PYPタグ標識技術を応用することで、生細胞内でメチル化DNAに結合した部位のみ蛍光が観測されるプローブを開発した。前年度までの研究で、PYPタグに融合したMBDをDNA結合色素で標識し、メチル化DNAに結合すると蛍光強度を上昇させるハイブリッドプローブを開発した。本年度では、プローブを生細胞内で構築した。まず、PYPタグの変異体をMBDに融合させた蛋白質を生細胞内に発現させ、DNA結合色素を持つラベル化分子を添加した。その後、共焦点蛍光顕微鏡により観測した。その結果、細胞核内から蛍光性の輝点が複数観測された。融合蛋白質を発現していない細胞や、MBDを融合していないPYPタグ変異体のみ発現している細胞にラベル化分子を添加しても、同様の蛍光は観測されなかった。また、この輝点は、Hoechstの蛍光と重なった。Hoechstは、メチル化DNAが豊富に存在するヘテロクロマチン領域を染色する。以上の結果から、ハイブリッドプローブ由来の蛍光輝点は、メチル化DNAに由来すると示唆された。更に、この確証を得るために、DNAメチル化阻害剤5-AzadCで細胞を処置し同様の実験を行ったところ、阻害剤未処置細胞で見られた蛍光輝点は観測されなかった。以上の結果から、ハイブリッドプローブにより、生細胞核内のメチル化DNAの可視化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生細胞のメチル化DNAを検出することが当初の目的であった。前年度までに取り組んだハイブリッドプローブ構築技術を生細胞に応用することで、当初の目的が達成された。顕微鏡観測実験に加え、DNAメチル化阻害剤を用いた解析実験も実施し、本技術を用いて、メチル化DNAを検出することができることが明らかとなった。このように、本研究計画は、概ね順調に達成されているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
PYPラベル化技術を用いて、生細胞においてMBDをDNA結合色素でラベル化し、小分子と蛋白質からなるハイブリッドプローブの構築に成功した。また、メチル化DNAを蛍光イメージングすることも可能となった。今後は、細胞周期や細胞分化の過程において、メチル化DNAの動態がどのように変化していくかを明らかにする。また、動態に加え、定量解析を実施し、生細胞内におけるDNAのメチル化レベルの変動も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ハイブリッドプローブを構成するDNA結合色素の蛍光特性は、メチル化DNAのイメージングの感度に直結する重要な要素である。これまで以上に優れた蛍光特性を持つことが示唆される蛍光色素を予備検討で見つけており、メチル化DNAをより高感度で検出できる見通しが立った。研究遂行上、プローブの再作成と評価のための追加実験が必要となった。このために、これらの実験を次年度に行う研究費が必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
MBDをラベル化する分子を再設計・合成するための有機合成試薬の購入経費として1,000,000円を、その分子を組み込んだハイブリッドプローブを創製し、DNA結合実験や蛍光測定実験を行うための生化学試薬の購入経費として500,000円を、この新規ハイブリッドプローブを用いて生細胞イメージング実験を行うための細胞生物学試薬の経費として785,369円を、使用する予定である。
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