研究課題/領域番号 |
26282216
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
及川 雅人 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (70273571)
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研究分担者 |
酒井 隆一 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (20265721)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | AMPA型受容体 / 多様性指向型有機合成 / モジュレーター / 神経科学 / 作用標的 |
研究実績の概要 |
イオンチャネル型グルタミン酸レセプター(iGluR)は、脊椎動物の中枢シナプスの神経伝達において中心的な役割を担い、創薬ターゲットとして注目されている。iGluR は20種のサブタイプタンパク質が知られている構造・機能共に極めて多様性の高い受容体であるが、最近、研究代表者の及川はiGluRリガンド候補として多様な構造を有する人工Gluアナログ類の化学合成を行い、酒井(研究分担者)が生物活性を評価したところ、マウスの自発的行動を抑制する化合物IKM-159を見出した。またSwanson博士(Northwestern University, USA)はIKM-159が培養海馬神経細胞の自発的興奮性シナプス電流を抑制することも見出した。本研究では、IKM-159の活性の強さと選択性の向上に取り組みつつ、そのパーシャルアゴニズムあるいはアロステリックな作用機構を構造生物学を含むタンパク質レベルから個体レベルまでの評価系で解明し、神経性疾患の治療薬へと発展が可能なリガンドの創製を目指す。こうしたリガンドは未だ解明されていないiGluRのチャネル開閉マシナリーの解析をも可能にするものである。 本年度は、IKM-159の神経生理活性に、その選択性や強さにおいて変調を与えると予想されるC環部類縁体11種類の合成を行った。具体的には、この類縁体群を効率よく得るために共通の中間体を多段階合成の中盤以降に設定し、それに対する多様性指向型有機合成により骨格多様な5種の類縁体、および置換基多様性を有する類縁体6種を合成した。このうち、4種についてはマウスに対するin vivo活性試験を酒井が実施し、3種はIKM-159が有していた活性をほぼ失ったことを明らかにした。残り1種についても活性の低下が認められ、IKM-159に含まれていたC5-amino基の存在がその抑制活性の発現に重要であると判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IKM-159のC環部類縁体の多様合成法を開発することができ、それにより11種類縁体のマウス活性評価を行い、C5-oxy類縁体は活性が大きく損なわれることを明らかにすることができた。以上の点においては順調であるが、IKM-159とは性質の異なる活性化合物の開発に至らず、in vitro活性評価に進むことができなかった点においてやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
C5-oxy類縁体において活性が低下したことは、IKM-159におけるC5-amino基の重要性を表している。また、C9位に導入したカルボニル基など官能基の存在が、マイナスに働いていることも示唆されている。これらの情報を新たに化合物設計に盛り込み、あらためて類縁体の多様合成を開始している。これにより失われた活性の回復を見込んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、合成研究を進めてIKM-159とは異なる性質の生理活性化合物が見出された場合に、その大量合成のための試薬を購入する予定であったが、この予定がずれ込み、購入を行うことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に求める活性化合物の開発が行える見通しであり、それを受け、大量合成のための試薬の購入を行う計画である。
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