研究課題
本研究では、ゼブラフィッシュを用いて、餌(ゾウリムシ)の捕食行動の獲得(習慣学習)に至る細胞レベルでの神経回路メカニズムの解明を行う。習慣学習には大脳皮質―基底核神経回路が関与することが哺乳類を用いた研究により明らかにされたが、細胞レベルでの学習機構にはまだ不明な点が多い。我々は単一シナプス活動を検出できる高感度な蛍光Ca2+プローブG-CaMPを開発し、これまでにゼブラフィッシュ稚魚の神経活動をin vivoで可視化することに成功している。本研究はこれを発展させ、ゼブラフィッシュが捕食行動を獲得する過程での神経活動を可視化により解析し、習慣学習の神経回路メカニズムを細胞レベルで解明することを目的としている。26年度は、習慣学習に至る細胞レベルでの神経回路機能を光計測・光操作できるようにする目的で、G-CaMP等を発現する各種ゼブラフィッシュトランスジェニック体の作成を進めた。次に、ゼブラフィッシュ稚魚に視覚提示を行い、ゼブラフィッシュ稚魚が提示物体に対して視線を移動させる行動を解析した。さらに、視覚提示の経験回数の増加に伴うゼブラフィッシュ稚魚の行動の上達を検討した。一方、研究代表者らが以前に開発した高感度な緑色Ca2+プローブであるG-CaMP7を用いて、脳の単一神経細胞の活動を報酬と関連付けることにより、動物が自発的にその単一神経細胞の活動を増大させることができることを示した。
2: おおむね順調に進展している
G-CaMP等を発現する各種ゼブラフィッシュトランスジェニック体の作成やゼブラフィッシュ稚魚の行動解析がおおむね順調に進んでいるため。
今後も継続して神経回路機能を光計測・光操作できるトランスジェニック体を作成し、捕食行動の獲得(習慣学習)に至る過程での神経活動を解析し、習慣学習の神経回路メカニズムを細胞レベルで解明していく。
当初購入を予定していた対物ピエゾが当該年度は研究機関内で利用できる状況となったことからその購入を保留したため、また、これまでの予算執行状況から次年度にはさらに多くの消耗品費が必要になると判断したため。
主として、行動実験、光学測定、光遺伝学、破壊・薬剤実験、分子遺伝学で必要となる消耗品費に充てることを計画している。
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http://subsi.saitama-u.ac.jp/