研究課題
本研究では、ゼブラフィッシュを用いて、餌(ゾウリムシ)の捕食行動の獲得(習慣学習)に至る細胞レベルでの神経回路メカニズムの解明を行う。習慣学習には大脳皮質―基底核神経回路が関与することが哺乳類を用いた研究により明らかにされたが、細胞レベルでの学習機構にはまだ不明な点が多い。我々は単一シナプス活動を検出できる高感度な蛍光Ca2+プローブG-CaMPを開発し、これまでにゼブラフィッシュ稚魚の神経活動をin vivoで可視化することに成功している。本研究はこれを発展させ、ゼブラフィッシュが捕食行動を獲得する過程での神経活動を可視化により解析し、習慣学習の神経回路メカニズムを細胞レベルで解明することを目的としている。27年度は、習慣学習に至る細胞レベルでの神経回路機能を光計測・光操作できるようにする目的で、G-CaMP等を発現する各種ゼブラフィッシュトランスジェニック体の作成を継続した。次に、ゼブラフィッシュ稚魚に視覚提示を行い、ゼブラフィッシュ稚魚が提示物体に対して視線を移動させる行動を解析した。さらに、視覚提示の経験回数の増加に伴うゼブラフィッシュ稚魚の行動の上達に関する検討を進めた。一方、研究代表者らが以前に開発した緑色Ca2+プローブG-CaMP7をさらに高感度化させたプローブであるG-CaMP7aを用いて、ゼブラフィッシュ脳の単一神経細胞レベルで細胞活動が学習と相関して上昇することを見出した。
2: おおむね順調に進展している
G-CaMP等を発現する各種ゼブラフィッシュトランスジェニック体の作成やゼブラフィッシュの行動解析、細胞活動解析がおおむね順調に進んでいるため。
今後も継続して神経回路機能を光計測・光操作できるトランスジェニック体を作成し、捕食行動の獲得(習慣学習)に至る過程での神経活動を解析し、習慣学習の神経回路メカニズムを細胞レベルで解明していく。
当該年度までの研究進捗状況から次年度以降に多くの消耗品費が必要になると判断したため。
主として、行動実験、光学測定、光遺伝学、破壊・薬剤実験、分子遺伝学で必要となる消耗品費に充てることを計画している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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