研究課題/領域番号 |
26282218
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 理器 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00378754)
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研究分担者 |
國枝 武治 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60609931)
池田 昭夫 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90212761)
齊藤 智 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70253242)
澤本 伸克 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90397547)
大須 理英子 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, その他部局等, 研究員 (60374112)
下竹 昭寛 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80726000)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腹側言語経路 / 意味認知機能 / 言語 / 事象関連電位 / 皮質電気刺激 / 皮質皮質間誘発電位 / 神経心理 / 機能代償 |
研究実績の概要 |
研究計画:日本語における腹側言語経路の機能・解剖および病態下の代償機転の包括的解明、に基づいて研究を推進した。難治部分てんかん外科の術前評価のために硬膜下電極を慢性留置した患者および腫瘍手術のために覚醒下手術を施行した患者で研究参加への同意を得た者を対象とした。腹側言語経路内の機能の共通性・差異の解明に関しては、意味認知課題を用いた皮質電気刺激・事象関連皮質電位記録から、側頭葉前方底部領域、特に前部紡錘状回が、意味認知に深く関わることを因果関係をもって示した(国内学会・論文発表)。呼称課題において、単試行レベルの意味記憶属性と局所電場電位(皮質脳波)から表象類似性分析(RSA)を用いて、前部側頭葉内の意味表象の時間的空間的デコーディングを試みた(論文投稿中、国内学会発表予定)。漢字/仮名読み課題に同期して高頻度電気刺激介入を行い、精神物理学的評価を定量的に行うことで、腹側経路内の前後方向の機能勾配の探索に着手した。皮質皮質間誘発電位(CCEP)を計測し、腹側経路内(側頭葉底面・外側、前頭葉腹外側領域)および他の言語関連領野との結合様式を探索し、標準脳での腹側言語経路の機能的結合地図作成に着手した。覚醒下手術症例において、皮質・白質の高頻度・低頻度電気刺激を施行し、症例蓄積して、腹側言語経路を担う白質線維束の機能および結合する皮質の同定をすすめた(国内学会発表)。てんかん焦点切除術症例および脳腫瘍例で腹側言語経路切除例の手術前後の神経心理学的評価を経時的に行い、腹側言語経路の障害後機能代償を評価した。言語/意味認知課題下のfMRI記録に関しては、正常被験者撮像で側頭葉底面でのゆがみを技術的に克服し、術前後のシステムレベルでの変容解明のための当施設でのfMRI撮像条件を整備でき、少数症例で記録を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の3本柱である、 (A)機能の共通性・差異の解明(ハブ領域、機能勾配):論文1本公開、1本投稿中 (B)脳機能結合地図の作成:症例蓄積し、標準脳上での腹側経路の機能的結合地図作成に着手した (C)経路障害後の機能代償機構解明:15名を超える症例での神経心理検査評価中 のそれぞれで、上記研究実績に具体的に示したように、研究計画にそって、症例蓄積およびデータ解析を順次行ってきた。ミクロ電極記録ついては、仕様・性能の特注が必要であり、研究用記録用アンプの納入が本年度末となった。
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今後の研究の推進方策 |
A. 腹側言語経路内の機能の共通性・差異の解明(ハブ領域・機能勾配の解明):H26年度に引き続き、意味認知・判断にかかわる神経活動(事象関連電位・高周波律動)を計測し、電気刺激による介入研究から、同領域の必要条件を検討する。入力モダリティの違い(例えば視覚・聴覚性)、や解剖学的分布(前方・後方、内側・外側)から腹側経路内の皮質領野の機能の共通性・差異を明らかにする。購入済のミクロ電極記録用アンプを用いて、各種環境を整えた後に、H27年度後半から頭蓋内ミクロ電極からの活動電位・電場電位計測に着手する。マクロ電極による計測データからシステムレベル・局所レベルのデコーディング法の検討を開始しており、これをミクロ電極計測データにも応用、推進していく。 B. 腹側言語経路の脳機能結合地図の作成: 電気的線維追跡法(CCEP) による検討を行う症例を蓄積していく。個々のデータを標準脳上に集約し腹側経路の機能結合地図作成を目指す。腹側言語経路を担う白質線維束の機能および結合する皮質の同定について、覚醒下手術症例を蓄積し、腹側言語経路の主要白質線維束(鉤状束・下前頭後頭束)の皮質結合部位を検討する。 C. 腹側言語経路障害後のシステムレベルの機能代償機転の解明:てんかん焦点切除あるいは脳腫瘍脳手術による腹側経路障害を有する患者の症例の蓄積を行う。切除部位と術後の解剖MRI、fMRI、術後神経心理検査成績を比較検討することで、腹側言語経路のネットワークレベルでの機能代償機転を可視化する。具体的には、解剖学的な観点から、左側頭葉前下方領域切除群、主要な線維束(鉤状束・下前頭後頭束)切断群、左中側頭部後方領域切除群の3群での比較を予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ミクロ電極記録用アンプの納入が年度末となったため、H26年度に使用予定であった関連の設備備品費・消耗品が購入できなかったため
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次年度使用額の使用計画 |
ミクロ電極記録用アンプの購入が年度末となったため、ミクロ電極関連の消耗品(電極、解析ソフト)が購入されなかった。これらの購入を次年度に計画する。言語/意味認知課題下でのマクロ電極・ミクロ電極(皮質脳波)からの神経活動のデコーディングにあたり、データ解析用ワークステーションおよびデータ保存用ハードディスク(設備備品費)購入を予定する。言語/意味認知課題下のfMRI記録を行うにあたり、MRI関連(ヘリウム使用代)の消耗品を補充する。対照の正常被験者での神経心理検査、MRI撮像に謝金を予定する。得られた研究成果を国内外の学会で発表し(研究成果発表:外国旅費、国内旅費)、学術論文にまとめる(論文投稿費)。
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