研究課題/領域番号 |
26282219
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
古田 寿昭 東邦大学, 理学部, 教授 (90231571)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ケージド化合物 / DNA / RNA / ゲノム編集 / クリック反応 |
研究実績の概要 |
1.長鎖2本鎖DNAおよびプラスミドDNAの任意の配列領域を光分解性保護基で修飾する方法を開発した。ヌクレオチド選択的ケージング試薬Bio-Bhc-diazoと26-merの1本鎖DNAの反応で,Bio-Bhc基が共有結合で結合すること,紫外光照射で脱保護されて元の未修飾DNAが生成することを確認した。導入されたBio-Bhc基は,DNA1分子に付き1個であることをMALDI-TOFマスペクトル測定で明らかにした。Bio-Bhc基で修飾された26-mer DNAをプライマーに用いるlong PCRと,それに続く,アフィニティ精製,およびライゲーション反応で,プライマーに設定した領域だけにケージンググループを持つケージドプラスミドDNAを調製可能であることを示した。 2.ビオチン付きのヌクレオチドケージング試薬を用いて,RNAのケージド化合物が合成できることを示した。100塩基程度の1本鎖RNAのリン酸部位に共有結合でケージンググループを導入できること,紫外光照射で脱保護できることを確認した。ゲノム編集技術を光制御する手法に展開することを目指して,CRISPR/Cas9システムのgRNAの修飾を行った。合成後アフィニティ精製したケージドgRNAを用いて,インビトロでCas9活性の光制御能を検討する実験系を構築した。 3.特定の細胞にターゲッティング可能なケージド化合物を調製するプラットフォームとしてクリッカブルケージンググループを開発した。細胞ターゲッティングのためのハロタグリガンドとイメージング用の蛍光性グループを併せ持つケージドドーパミンの合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
領域選択的に修飾されたケージドプラスミドDNAの調製法を確立したこと,DNA1分子に付き1個のBio=Bhc基が共有結合で導入されることを初めて確認したこと,当初の計画にはなかったが,CRISPR/Cas9システムのgRNAのケージド化合物合成に利用できることを明らかにし,ゲノム編集の光制御法への展開の端緒が開けたこと,当初の計画通り,細胞ターゲティング能が期待されるケージドドーパミンの開発に成功したことによる。
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今後の研究の推進方策 |
1.新たに開発したヌクレオチド選択的ケージング試薬Bio-Bhc-diazoを用いて,任意の領域に光分解性保護基を導入した長鎖2本鎖ケージドDNAおよびケージドプラスミドDNAを調製する方法を開発したので,この方法の汎用性の確認と調製法の最適化を図る。さらに,任意の遺伝子発現を効率よく光制御する手法に展開するため,修飾プライマーに導入されたケージンググループの位置と数,およびコピーできるプラスミドの長さと種類を明らかにする。 2.塩基配列選択的にオリゴヌクレオチドを修飾することが期待できるBio-PNA-Bhc-diazoを新たに開発する。PNAは1本鎖および2本鎖DNAのいずれも配列選択的に認識するので,全長のmRNAやプラスミドDNAを配列選択的に修飾したケージドオリゴヌクレオチドを合成可能になる。この手法をCRISPR/Cas9システムのgRNAに適用して,ゲノム編集を光制御する技術への展開を図る。3本鎖形成可能な配列のPNAを導入したBio-PNA-Bhc-diazoを調製して,PNA結合配列を導入したプラスミドDNAとの反応で,領域選択的な2本鎖DNAのケージングが可能か検証する。 3.内在性遺伝子の転写,翻訳および遺伝子産物の機能を活性化または阻害する低分子量機能性分子のケージド化合物を開発する。モデル生物個体での利用が可能になるように,細胞種選択性を付与する。前年度までの研究で開発したクリッカブルケージンググループを利用する方法,およびある種の酵素存在下で光機能性を獲得する新規ケージド化合物X-Bhcケージド化合物を利用する。
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