研究課題
ある行動をすべきかどうかの判断は、行動した結果得られる報酬価値(ベネフィット)とその行動に費やされるコストとの比較をもとに行われる。本研究は,コスト・ベネフィット比較に基づく行動意欲の制御の神経回路とその仕組みの解明を目的とする。H26年度は行動課題中の前帯状皮質に薬物を局所注入し、コストベネフィット判断への影響を調べた。2頭のマカクサルを対象に視覚刺激と価値との連合をもとにした報酬獲得行動を訓練し、頭部に固定具とチャンバーを装着する手術をおこなった。前帯状皮質のターゲット部位にカニューレを挿入し、ドーパミンD2受容体アンタゴニスト(Eticlopride)を局所注入し、報酬獲得行動の変化を調べた。その結果、ACCの一部に阻害剤を注入した場合にコスト・ベネフィットのバランス点がシフトする形で行動意欲制御に変化が生じた。この結果は前部帯状皮質におけるドーパミンD2受容体を介したコスト・ベネフィット評価がなされている可能性を示唆する。一方、化学遺伝学的手法の一つDREADDをサルで利用できるように手技の確立を進め、動物が生きた状態でDREADD発現が確認できるPETイメージング法を開発した。このシステムを用い、特に線条体腹側部が価値判断にどのように関与するかを調べた。2頭のサルの吻内側尾状核の神経細胞に発現させた抑制性DREADDをCNO投与により活性化させ神経活動を抑制した場合に、コスト・ベネフィット判断が特異的に障害されることが繰り返し確認された。今後、前帯状皮質や側坐核などへ適用することで、コスト・ベネフィット評価の仕組みの理解を進める。
2: おおむね順調に進展している
前帯状皮質のD2受容体を介したドーパミン伝達により、コスト・ベネフィット評価が制御されている可能性を示すなど、本研究が目的とするメカニズム理解が進んでいる。また、DREADDをサルに適用可能であることを示し、線条体の神経活動の抑制制御を可能にするなど、新しい研究方法の開発も順調に進んでいる。
今後、DREADD法を前帯状皮質や側坐核などへ適用することで、コスト・ベネフィット評価の仕組みを理解することにつなげる。
H26年度ナショナルバイオリソースから購入予定であったニホンザルが出荷延期になり、H27年度に導入されることになったため。
ニホンザルを導入するための費用と飼育管理費などに用いる。
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http://www.nirs.go.jp/research/division/mic/group/t_system-bunshi.html