研究課題
ある行動をすべきかどうかの判断は、行動した結果得られる報酬価値(ベネフィット)とその行動に費やされるコストとの比較をもとに行われる。本研究は,コスト・ベネフィット比較に基づく行動意欲の制御の神経回路とその仕組みの解明を目的とする。H28年度は化学遺伝学的手法の一つDREADDを利用した局所脳活動制御技術と、非侵襲にDREADD受容体の発現を確認できるPETイメージング法の融合技術を確立した。このシステムを用い、前頭眼窩野から神経投射をうける線条体領域である吻内側尾状核のコスト・ベネフィット比較への関与を調べた。3頭のサルの吻内側尾状核の神経細胞に抑制性DREADDを発現させ、その位置をPETで確認した。活性化薬CNOを投与することにより、その神経活動を抑制した場合に、報酬量に基づく意思決定が特異的に障害されることが繰り返し確認された(Nagaiら2016)。一方、時間待ちと仕事量の2つのコストに基づく意思決定においては、吻内側尾状核の神経活動抑制の影響が見られないことが分かった。これらの結果より、前頭眼窩野 吻内側尾状核のネットワークは、報酬量など価値に基づく意思決定に必須の役割を果たすものの、コスト・ベネフィット判断への関与は限定的であることが示唆され、これまの結果と合わせ、同機能の腹側線条体における領域特異性が浮き彫りとなった。
2: おおむね順調に進展している
腹側線条体の一部においては、コスト・ベネフィット判断への関与が低いことを示唆する結果が得られ、領域特異性がこれまで以上に明確となってきているため。
得られた結果を踏まえ、今後は行動課題遂行中および、関連脳部位制御時の脳活動を記録解析することで、神経機構解明につなげる。
特になし
消耗品に利用
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Nature Communications
巻: 7 ページ: 13605
10.1038/ncomms13605
J. Neuroscience
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http://www.nirs.qst.go.jp/seika/brain/team/system_09.html