研究課題/領域番号 |
26282223
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
劉 国相 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳機能計測研究室, 研究マネージャー (40358817)
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研究分担者 |
上口 貴志 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳機能計測研究室, 主任研究員 (80403070)
黄田 育宏 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳機能計測研究室, 主任研究員 (60374716)
西本 伸志 独立行政法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 主任研究員 (00713455)
吉岡 芳親 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 教授 (00174897)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | fMRI / 脳機能 |
研究実績の概要 |
(1)神経活動に伴う電位の変化を局所磁場の実時間変化として捉える新しいMRI計測原理の開発を目指して、7T MRIの高いS/Nと磁化率コントラストを利用し計測システム構築した。ファントムと動物の脳での電気刺激によるMRI信号変化を観察する実験環境を整備した。 (2)中枢神経形成の詳細画像による評価、脳実質への放射線の影響の評価、脳炎症の可視化、ドーパミン神経活動の可視化を中心に発展させた。また、機能や炎症を反映することができるプローブ合成も行った。 (3)脳機能計測を目的としたfMRIにおいて,計測における空間的精度の向上と,得られた計測データの質的向上の両立を目指した検討を行った.高い空間的精度を得るためには高い解像度での撮像が不可欠であるが,fMRIで用いられる撮像法は,解像度を高めようとするほど画像の歪みが増大し,さらに信号ノイズ比も大幅に低下するというトレードオフの特性がある.そこで画像歪みの問題に対しては,われわれの先行研究をもとに画像再構成処理の過程で歪み補正を行うシステムを構築した.つぎに信号ノイズ比の低下に対しては,計測目的に応じた撮像パラメータの最適化を実施し,従来,3mm角程度の解像度が一般的であったのに対して本研究では1.5mm角程度まで高解像度化を達成した.また,fMRIの計測データには生理的ノイズや被験者の動きの影響が加わり,データの質を劣化させるが,本研究では心拍由来の生理的ノイズを軽減するための新規計測法を開発,さらに被験者の動きに応じてリアルタイムにスライス位置を追従させるシステムを組み込んだ.これらにより,従来よりも高解像度で,かつ歪みが少なく,質の高いfMRIデータを得ることが可能となった. (4)超高感度と高空間解像度MRI撮像するために、コイルの開発の環境整備をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファントムと動物の脳での電気刺激による新規MRI信号変化を観察する実験環境(撮像シーケンスと画像再構成システム)を整備したので、次年度の動物実験を期待できる。 超高磁場MRIの欠点である画像の歪み問題を改善されたし、心拍由来の生理的ノイズを軽減するための新規計測法を開発,さらに被験者の動きに応じてリアルタイムにスライス位置を追従させるシステムを組み込んだ.これらにより,従来よりも高解像度で,かつ歪みが少なく,質の高いfMRIデータを得ることが可能となった.
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今後の研究の推進方策 |
(1) 平成27年度には動物による実験を開始する.まず,動物より採取した末梢神経に電極を接続し,均一な組織等価物質に埋入させたファントムを作成する.このファントムを用いてさらに基礎的な実験を重ね,電位の変化を精度よく計測するための撮像法,解析法を検討していく.続いてin vivoでの動物実験に移行し,最終的にヒトでの実験を開始する.動物,ヒトのいずれにおいても,まずは正中神経等を対象として,一般的なヒトfMRI実験で用いられる微弱な電気刺激に対する神経活動の可視化に挑戦する. (2)実用化に向けてのバイオマーカー検討を進める.時間分解能の高い機能計測においては,安全性の面から十分なS/Nが得られない条件での撮像を余儀なくされる可能性もあるため,単純なタスクでの実験を行う. (3)超高解像度撮像で問題となる,拍動等のわずかな動きをいかに補償,補正するか,実用的な方法の確立を目指す.生理学的信号同期では,重要な撮像パラメータであるTR(繰り返し時間)が心拍数等に依存して不規則に変化するため,定量性の高い撮像方法(マルチエコー計測による緩和時定数を用いるなど)を検討するほか,サブミリメートルオーダでの高精度な動き補正法の開発を視野に入れている. (4)知覚内容の推定,具体的には,視覚提示実験による脳機能計測データから「被験者が何を見たか」を推定する方法を研究分担者西本らが発表し,著名な雑誌で紹介されるなど国際的に高い注目を浴びた。この方法は,あらかじめ多数のトレーニング動画を被験者に提示し,より高精度な推定を行うには,全脳を高いS/Nで,高い解像度で,かつ高い時間分解能で得る必要がある.これまでに述べた各課題をクリアしていくことで,おのずとそれらは達成される.こころの中を表現できる新しい道具の完成を目指したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
7T MRIの性能試験に用いるファントムを作成する予定であったが,その材質等に検討の余地があると判断し,次年度に再検討することとしたため.
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次年度使用額の使用計画 |
7T MRIでの性能試験に最適な材質を検討したうえで購入し,ファントム実験に供する.
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