研究課題/領域番号 |
26283010
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
福家 洋介 大東文化大学, 国際関係学部, 准教授 (80199273)
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研究分担者 |
内海 愛子 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 名誉教授 (70203560)
藤林 泰 埼玉大学, 教育機構, 非常勤講師 (80292639)
宮内 泰介 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50222328)
李 泳采 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 准教授 (30460108)
砂井 紫里 早稲田大学, イスラム地域研究機構, 招聘研究員 (90367152)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水産業 / グローバル化 / イワシ / カツオ・マグロ / 缶詰 |
研究実績の概要 |
イワシの国内調査は伊吹島(香川県)・九十九島(長崎県)に加えて南串山(長崎県)において、イワシ漁、煮干し一次・二次加工の現場での聞き取り調査を行った。卸売ではさぬき市・観音寺市(香川県)、尾道市(広島県)で聞き取り調査を実施。文献調査も継続。煮干しの「食材化」の足跡が見えてきた。海外では済州島(韓国)・迪化街(台北)・プカロンガン・バリ海峡(インドネシア)・トラート県(タイ)・ジェネラルサントス(ミンダナオ)で調査を行った。韓国では研究者への聞き取り調査、資料収集を継続。食材として日本以上にイワシの利用が盛んである韓国、インドネシア・タイ・フィリピンでも「民の経済」を支えるイワシが健在であった。タイで困難であった缶詰工場の見学が長崎で実現した。マグロ缶の製造ではなかったが、原料調達の世界的ネットワークの一端を知ることができた。タイの水産加工業における外国人労働者の実態について欧米から強い批判がある。この問題に関してタイのNGOから聞き取り調査を行った。一大消費地である日本からタイに向けて批判の声が少ないことに危機感を持つ。本研究が担うべき役割のひとつである。ジェネラルサントス周辺のマグロ缶詰・水産加工場労働者の聞き取り調査から、工場とその系列派遣企業が最低賃金で契約労働者を確保していた。タイ、フィリピン、インドネシアの現地調査からカツオ・マグロの調達体制に加えて、水産加工労働者確保が水産物グローバル化を支えていることが見えてきた。中国・台湾におけるハタ養殖の現地調査は十分にできなかったが、資料収集は継続した。研究分担者による国内・海外調査結果の分析などを研究組織内で情報共有するため勉強会を4回実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度研究体制は研究分担者5名と1名の研究協力者に加えて、さらに2名の研究協力者に参加をお願いした。その結果、インドネシアではバリ海峡におけるイワシ漁業の調査、長崎のイワシ調査に南串山(雲仙市)調査を追加することができた。マハーチャイ・トラート県(タイ)でのNGO聞き取り調査、ジェネラルサントス(ミンダナオ)とプカロンガン(中ジャワ)では、イワシ・カツオ・マグロ缶詰工場労働者などから聞き取り調査ができた。タイでは許可されなかった缶詰工場見学が国内で実現した。これまでの調査活動を通して、国内外のそれぞれの現場で私たちの調査に協力をお願いできるNGOや漁業関連機関とのつながりができつつある。このつながりを大切にしたい。ハタ養殖調査が遅れているが、全体としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
韓国に行くと、イワシ・煮干しの存在感に圧倒される。村井が「ミョルチ(イワシ)をより深く」と書き残した理由のひとつだろうが、私たちはこれを日本だけでなく、アジアの広がりのなかで考えてみようとしている。その第一歩として、韓国のイワシ研究者との拡大勉強会を開催する。また、国内外で関係のあるNGOや漁業関係者・関連機関の協力を得て、水産加工工場労働者実態の比較を行ってみたい。世界一の水産加工基地であるタイに向けて資源問題・労働者の人権問題などで欧米からの批判が続いている。すでに欧米各国は水産資源の持続的な利用を意識してあらたな商品を開発している。タイに向けられた批判は、水産物の一大消費地である日本にも向けられている。本研究の目的をあらためて確認したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
割り当てられた助成金を消化したと判断したが、精算してみると179円の残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究実施計画に基づいて、助成金の消化状況を注意深く確認しながら、予算を適切に消化していく。
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