研究課題/領域番号 |
26283011
|
研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
鎌田 真弓 名古屋商科大学, 経済学部, 教授 (20259344)
|
研究分担者 |
村上 雄一 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (10302316)
長津 一史 東洋大学, 社会学部, 准教授 (20324676)
加藤 めぐみ 明星大学, 人文学部, 教授 (30247168)
飯笹 佐代子 東北文化学園大学, 総合政策学部, 准教授 (30534408)
内海 愛子 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70203560)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 境界域 / 国際情報交換 / オーストラリア / インドネシア / 越境移動 / 契約労働者 / 漁民 / ボートピープル |
研究実績の概要 |
研究協力者を含め10名のメンバーは、豪北部地域で働いた真珠貝ダイバーや日本人契約労働者、いわゆる「ボートピープル」、インドネシア漁民、インドネシアの行商人、豪州の国境・漁業水域の管理体制、こうした越境する人々に関する豪州での言説など、それぞれの調査対象の人たちやあるいは地域で、聞き取り調査および資・史料収集を行った。調査を行った地域は以下のとおり。豪州:キャンベラ、シドニー、ブリスベン、木曜島、インドネシア:中ジャワ州ソロ地方、東南スラウェシ州ワカトビ県、日本:和歌山県、愛媛県。訪問先では、研究関心が近いインドネシア、豪州、日本の研究者とも研究成果に関する情報交換など研究交流を行った。 さらに、3月には愛媛県海南町および西予市での巡検を行い、戦前・戦後にオーストラリア、ブルームで真珠貝採取に携わった元ダイバーや関係者に聞き取り調査を行うとともに、資料を閲覧した。 共同研究としての問題意識および研究成果を共有するために、研究会を3回開催した。第1回(於名古屋)は、オーストラリア在住の研究協力者を含めて全員が参加し、それぞれの研究関心およびテーマを報告するとともに、豪北部の木曜島での真珠貝漁およびその記録に関する報告が行われた。第2回は(於東京)では、インドネシアのジャワ島出身のジャムー(生薬)売りの経済活動、およびバジャウ・サマ人の居住形態・生業に関する報告が行われた。第3回(於東京)は、豪州の漁業水域・領海の歴史的変遷、20世紀初頭の豪州における日本人契約労働者、いわゆるボートピープルをめぐる豪州の管理体制に関する報告が行われた。 また、本報告の業績リストに記したように、各々の研究成果をもとに学会発表や論文執筆を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
それぞれのテーマに沿った対象グループ・地域での聞き取り調査、および史・資料の収集は順調に行われている。聞き取り調査や公文書館での閲覧を通して史・資料の探査やを行い、新たな発見に繋がった。また、対象とするグループの「経験知」を収集・分析するために、調査地域の拡大を試みている。関係者の手元にある未出版の日記や記録など、許諾を得られたものに関しては、史・資料の保存を進めるために翻刻やデジタル化の作業も進めている。 当該共同研究は、インドネシアとオーストラリアの境界域に着目して、越境移動の動態を歴史的・地域複合的に把握し、境界研究に新たな視座を提供しようというもので、インドネシア研究者とオーストラリア研究者から構成されている。「東南アジア研究」と「オセアニア研究」に分断されがちな地域研究者間の情報交換を図る上で、研究会は重要な役割を果たした。豪州在住の研究協力者がすべての研究会に出席することは難しいが、日本在住の研究者は全員参加できるよう日程の調整を行った。さらにオンラインストレージを使って、共同研究として共有すべき資料や研究成果の共有を進めている。 また、インドネシアやオーストラリアの研究者との国際的な情報交換も図り、当該課題の成果報告の際には、国際的なシンポジウムを開催したいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究分担者・研究協力者は、引き続き各自のテーマでの現地調査(インドネシア、オーストラリア、台湾、日本)を行う。特に、研究対象とする越境集団の「経験知」の分析枠組みと、そのコンテンツや共有方法に関して精査を加えるとともに、彼らが「境界」をどのように認識してきたか分析する。他方、「境界管理」を研究対象とするメンバーは、越境移動の動態変化に国家がどのように対処してきたのか、国家主権の在り様を再検討する。 本年度は、共同研究の一部のメンバーでのインドネシア・ティモール島のクパンおよびロティ島、ダーウィンでの巡検を計画している。当該地域は、伝統的に豪州の真珠貝漁の漁師を送り出した地域で、また豪北部の海域で漁業を行ってきた漁民が居住する地域でもある。近年では当該地域の漁民が豪州海域での不法操業や時にはボート・ピープルの密航にも加担し、豪州北部の町のダーウィンやブルームで収監されている。インドネシアと豪州の双方の事情に留意して、インドネシア・豪州間の海域での境界管理の実情に関する調査を行う。 さらに、真珠貝ダイバー・日本人契約労働者・南洋真珠養殖をテーマとするグループは、愛媛、和歌山、沖縄、三重などでの聞き取り調査、および豪州の公文書館での史・資料調査を継続し、調査結果に関する情報交換および共有を行う。 それぞれの研究成果を共有し、研究課題の深化を図るために、年3回の研究会を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
最大の理由は、3月末に行われた現地調査(インドネシア)の精算が次年度に繰り越されたことにある。また、分担者の体調不良により、3月に予定していた現地調査が次年度に延期されることになった。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記に記したように、繰越金のうち200,000円は本年度5月には執行される。さらに、体調不良であった分担者も回復し、今年度は海外調査を行う予定である。 未使用額に関しては、分担金の分配の際に調整を行った。2年目を迎える本課題では、各分担者は密度の濃い、かつ広範囲の現地調査を予定している。未使用額に関しては、こうした現地調査の旅費として使用する。
|