研究課題/領域番号 |
26284004
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
檜垣 立哉 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (70242071)
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研究分担者 |
上野 修 大阪大学, 文学研究科, 名誉教授 (10184946)
小泉 義之 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (10225352)
合田 正人 明治大学, 文学部, 専任教授 (60170445)
國分 功一郎 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (70515444)
千葉 雅也 立命館大学, 先端総合学術研究科, 准教授 (70646372)
近藤 和敬 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (90608572)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ドゥルーズ / ガタリ / 現代フランス哲学 / 国際化拠点 / フランス |
研究実績の概要 |
今年度はまず、本研究の本義であるドゥルーズ=ガタリ研究の国際的展開を企てるために、フィリピンでおこなわれたアジア・ドゥルーズ=ガタリ学会、およびブラジルのサンパウロでおこなわれた国際学会に院生を、当該科研およびそのほかの経費で派遣し、研究発表英語をおこなった。また一連の研究の進展のなかで、来年度のドゥルーズ=ガタリ学会に、研究分担者の國分功一郎がオーガナイザーとなり東京大学駒場での開催が決まったことは成果の一端であるといえる。本科研費は四年前の同アジア大会が大阪大学で開かれる際のキーノートスピーカー招聘をひとつの軸として申請されたという経緯がある。アジア大会はその後インド、韓国、シンガポール、フィリピンをめぐり日本では二回目の開催となる。こうしたかたちでの、研究の地道な継続性は、人文学の基礎研究にとって大きな意味をもつとおもう。 また科研費そのほかにおいて四月に、一連の研究のフランス側のパートナーになってくれているアンヌ・ソヴァニャルグ(パリナンテール大学)とグレゴリー・フラックスマン(ノースカロライナ大学)を招聘し、大阪大学でセミナーを二度開催してもらった。 まだ、今年度においては最終年度(事情があり一部基金はもちこした)であるということで、この科研費のメンバーが中心になり、また、科研費で開催されたセミナーなどで発表してもらった若手・中堅研究者にも声をかえて科研費研究の総括ともいうべき書籍『ドゥルーズの21世紀』(檜垣立哉・小泉義之・合田正人編)河出書房新社(503ページ 筆者18人)を刊行することができた。これにより、この間の本科研費の目的である国際拠点形成の具体的な交流やその内容を一般にも公開するとともに、同時に若手研究者やPDなど周辺的にかかわってくれた方々にも、その成果を公開することが可能になった。この点は最終年のまとめとして強調しておきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進行しているが、昨年度は招聘やあるいは学会派遣などにかんして、体調の問題で取り消しなどが発生し、その分は基金分として繰越手続きをおこなっている。とはいえ内容的には(繰り越したものも、ドゥルーズ=ガタリの国際会議派遣と、同様の研究者招聘に使用されるものであり)、先に記した河出書房新社からの『ドゥルーズの21世紀』を刊行することによって、十分な成果を提示しているとおもわれる。 総じて5年間のあり方を振り返るならば、この科研費はドゥルーズ=ガタリに関する国際会議がアジアで定期的に開催されることとなり、その第二回を大阪大学で行うことになったため、多くのキーノートスピーカーの招聘などが必要になるまずはそれを軸として申請した側面がある。ただそれは一回の単発の学会のためではなく、ヨーロッパ・アメリカでおこなわれている同学会とも連携し、長い時間にわたって日本の人文学、とりわけドゥルーズを中心としたフランス哲学研究の国際的発信を目指し、それに関連して、海外招聘や国内でのシンポジウムを開催することにあった。 その意味でいえば、アジアで開催されている2014年度以降の同学会には、研究代表者・分担者や院生を中心として必ず日本の研究者を派遣し、その研究水準を示すとともに、とりわけパリナンテール大学のアンヌ・ソヴァニャルグおよびエリー・デューリングをほぼ毎年招聘するなど、継続的な国際交流がおこなわれるをおこなってきた。またその過程で、若手を中心としたりあるテーマ設定をしたワークショップを開催することができ、最終的には上記書籍に取りまとめることができた。 これらを考えるに、アジアとの連携についてはかなりの強化をなすことができ、また当初目的としていたラテンアメリカ圏の研究者も今年度受け入れると言う事情もあり、国際化拠点形成というおおきな意義は概ね達せられたとおもわれる。
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今後の研究の推進方策 |
この科研費での研究推進は、昨年度遂行できなかった計画に関して繰越し金があるだけであるので、今年度はそれによってドゥルーズ=ガタリ学会のイギリス大会への派遣と、アンヌ・ソヴァニャルグを中心とするフランス・カナダ・ブラジルの研究者の招聘や講演に用いることとした。 とはいえ、たとえばこのアジア学会が本年は東京大学駒場キャンパスで開催されるなど、本科研費でおこなったことの継続性は達成できたと考えられる。 またこの科研費を利用して何度も招聘したパリナンテール大学とは、昨年度大阪大学人間科学研究科との学部間協定を結ぶことができ、今後ラボ協定などい向かうことによって、コチュテル(相互学位授与システム)などをふくめた、院生レヴェルでの国際化的な研究の展開につとめるための足がかりはを設けることができたと考えられる。 人文科学研究や、あるいはそれに関する共同研究の推進は相当に長い時間をかけた相互的な信頼関係の設定が不可欠である。また、往々にして国内での業績にとどまりがちであったこの分野において、国際論文を英語およびフランス語で執筆するのが常態になるためには長い時間がかかることはいうまでもない。この点において、本科研費は必要な道筋を切り開くことを可能にしたと評価できるとおもわれる。今後は別資金そのほかをもちいて、本質的にはより深いレヴェルでの研究の国際交流性を深めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究予定者の健康上の理由などで予定されたサンパウロ開催のドゥルーズ=ガタリ学会への派遣そのものができなくなったこと、および招聘を予定していた研究者との都合が合わず、計画通りに進まなかったことなどがあげられる。 今年度の使用計画としては、まずロンドンで開催されるドゥルーズ=ガタリ学会に研究代表者が参加し、英語において発表するとともに国際的な研究関係の継続を目指すということがまずあげられ、ついで、東京大学で開催されるアジア ドゥルーズ=ガタリ学会に参加するアンヌ・ソヴァニャルグ(パリナンテール大学)を中心とする3名(他2名はカナダおよびブラジルの研究者である)を大阪に招聘し、ガタリを巡るワークショップなどを開催することなどがあげられる。基本的にこうした試みにより、これまで継続して発展させてきた国際交流を一層盛んにさせることはができると考えらられる。そのほかの国際会議への参加も考えられるが、現在基金分として残存している金額では上記計画をこなすので使いきってしまうので、とりあえずはこれに専念したい。
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