研究課題/領域番号 |
26284005
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岡田 光弘 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30224025)
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研究分担者 |
金子 洋之 専修大学, 文学部, 教授 (60191988)
峯島 宏次 お茶の水女子大学, 文学部シミュレーション科学教育研究センター, 講師 (80725739)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 直観主義論理 / 論理学の哲学 / 数学の哲学 / 学際論理推論研究 / 論理学 / フッサールの論理 / ウィトゲンシュタインの数学の哲学 / 図形論理推論 |
研究実績の概要 |
20世紀の論理学論争の中で重要な役割を果たした直観主義論理哲学を中心に現代的で学際的視点から論理推論について考察した。論理哲学史(及び「数学の哲学」史)研究手法、現代証明論手法、認知科学的推論研究手法などを統合してこれを行った。本年度は特にこれら3方向の研究手法による研究を充実させたことにより、さらに3手法を統合した研究を進めることが可能となった。この統合研究も進展させた。 1.直観主義論理学派とヒルベルトら形式主義―有限主義学派らとの論争を、同時期のフッサール、ウィトゲンシュタインらの「論証・証明」の哲学やその後の論理哲学議論も含め再吟味した。これらを通じて、「論理学の哲学」の新しい視点を「証明の哲学」として提示することを目指してきた。 2.最新の論理手法を用いて、線形論理-単純論理の推論・証明論の観点による直観主義論理と直観主義論理意味論の捉え直し,及び図的論理の推論研究を進めた。 3.日常の自然言語推論や図的推論や意思決定判断における論理推論の役割を検討するとともに、論理学理論と認知科学的手法を組み合わせて、被験者調査によりこれらのテーマに対する新しい知見を得た。 これら1-3を統合して直観主義論理に関する論争を捉え直す作業を進展させた。 また国際共同研究も進めてきた。特に、1についてはフランス・パリ大学第1校哲学グループを中心とした海外連携グループと共同研究を進め成果を上げた。2についてはフランス・リヨン大学哲学グループと、3についてはローマ大学第3校論理学グループと共同研究を進め、成果を上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
論理哲学史研究手法、現代論理手法、認知科学的・意思決定的判断研究手法のそれぞれの手法による推論研究を充分に進展させた。 1.Synthese誌、Hamburg"Trends of Proof Theory"ドイツ数学会併設ワークショップ招待講演、日本現象学年報などで、直観主義論理学派とヒルベルトら形式主義―有限主義らとの論争を、同時期のフッサール、ウィトゲンシュタインらの論証の哲学や、その後の議論も含めた論理学史的成果を発表した。 2.Journal of Logic, Language and Information誌、Philosophy of Logic 国際ワークショップなどで、図的論証研究、線形論理-単純論理の直観主義的論証研究及び古典論理やオイラー図論理に隠されている直観主義的推論などを最新の現代論理学手法により示した。 3 Frontiers in Psychology (Journal of Neuro-decision Science)誌、第5回Biology of Decision Making国際会議招待講演などで、日常の自然言語推論や図的推論や意思決定判断に関する我々の成果を公開した。 このように、この課題テーマについて学際的な成果発表ができた。さらに国際連携拠点との共同研究も大きく進展させることができた。フランス・パリ大学第1校哲学グループとは計3回(5月、9月、1月)会合を持ち、1に関する共同研究を進展させた。2と3についてはフランス・リヨン大学哲学グループやイタリア・ローマ第3大学論理学・数学グループらの訪問を受け、共同研究を進展させつつある。 これら1-3の成果をもとに、学際的論理推論研究を予想以上に進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究を継続し、発展させていく。 1.直観主義学派、Hilbertg学派、Wittgenstein、Husserlなどに関連する数学の哲学の研究を進める。通常の現代論理学において見逃されることが多い直観主義論理及び現象学論理などをより明確化する。この文脈から、Peirce、 Hankel、 Goodsteinらの論理学の哲学も検討する。 2.我々が導入している認知科学的手法や図的推論手法をさらに発展させ、「論理推論」の理解を目指す。特に、日常の論理推論や論理的判断の研究、論理推論と意思決定との関連性の研究、論理推論能力の個人差の源泉についての研究なども含めて、これまでにない学際的論理推論研究を進める。 3.直観主義論理の低層レベルの論理推論構造及び論証の正規性の構造を、線形論理的手法を用いてさらに解明する。また、線形論理的論証及び論証の正規性などについての技術的証明論概念が「論理学の哲学」にどのような新しい視点を提供するかを考察する。 このような多層的で学際的な研究をもとに、直観主義論理を中心とした論理推論研究を進め、これを通じて、「論理学の哲学」研究と「数学の哲学」研究に対して新しい視点を与えることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題に関する国際共同研究のうちの論理哲学研究部分については、フランス側で本研究に対する自己資金を新たに得たことなどにより、共同研究渡航費などの日本側負担が予定より軽減された。また、理論仮説モデルの構築作業の日程から、被験者実験の一部が次年度に延期となり、これに伴う支出が次年度に行われることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
本課題の最終2年間の本研究の取りまとめに向けて有効に活用する。取りまとめに必要な被験者調査関係費用、実験機材消耗品費用、研究とりまとめのための研究補助及び研究用プログラミング費用、国際共同研究とりまとめのための交流渡航費用、国際会議などでの成果発表のための旅費などに支出する。
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