研究課題/領域番号 |
26284026
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
宮治 昭 龍谷大学, 世界仏教文化研究センター, 研究フェロー (70022374)
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研究分担者 |
肥田 路美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00318718)
入澤 崇 龍谷大学, 文学部, 教授 (10223356)
辛嶋 静志 創価大学, 国際仏教学高等研究所, 教授 (80221894)
稲本 泰生 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (70252509)
岡本 健資 龍谷大学, 政策学部, 准教授 (10425043)
福山 泰子 龍谷大学, 国際学部, 教授 (40513338)
上枝 いづみ 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (40727880)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 仏教美術史 / 仏教図像学 / 中央アジア美術 / 釈迦信仰 / 仏伝美術 / 弥勒信仰 / 弥勒上生・下生信仰 / 阿弥陀信仰 |
研究実績の概要 |
本年度は当初予定の最終年度であり、今までの調査・研究で抜けていた部分、および総括的な研究を行うよう努めた。 実地調査に関しては、韓国ソウルの国立中央博物館に所蔵される大谷探検隊将来の中央アジア出土の美術品(約70点)、および同館所蔵のガンダーラ彫刻(寄贈品と購入品25点)の調査を行った。調査はギャラリーの展示品、および収蔵庫所蔵作品を含み、大谷コレクションの全体像を大略把握することができた。また、特にキジル壁画、トヨク壁画、コータン将来の塑像、ストゥッコ像、テラコッタ像などは大変興味深く、詳しく調査を行った。なお、同行した橘堂晃一氏はウイグル文字、漢文銘文を中心に詳細な調査を行った。結果、キジル壁画に関して、二点の第一インド・イラン様式壁画断片については、当初の石窟をある程度推定することが出来た。さらに、トルファン出土のブラーフミー銘文の一部が誓願図と関わる可能性も見出すことができた。 国立中央博物館所蔵の大谷探検隊将来の収集品の調査の実施は従来許可が難しかったが、今回は特別な計らいを得て、収蔵庫の多数の作例を写真撮影を含めて十分な調査を行うことができ、新たな発見を含む成果をあげることができた。 また、研究に関しては、4回の全体研究会を開催し、中央アジアの仏教美術と南インドの仏伝説話図との比較、中央アジアで独特の発展を見せる観心十法界図、および中央アジアの弥勒信仰に関して美術史と文献学からのアプローチによる研究などをテーマとして研究発表と討論を行った。特にインド、ガンダーラ、およびトカラ仏教、ウイグル仏教に見られる弥勒信仰に関し、文献と美術からその様相を明らかにすべく、2回の研究会を開催して成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に関係する実地調査に関しては、ソウル国立中央博物館の収蔵品調査によって大きな成果が得られた。今回の調査は、先述した新たな発見を含んでおり、ソウル国立中央博物館にとっても有益な成果をあげることができた。本研究に関するこれまでの資料収集とデータ整理については必ずしも十分とは言えないが、一応の作業を終えることができている。 本研究の大きな目標は、最終年度に、研究の点検とまとめを行い、その成果を報告書として刊行することであった。今年度末(平成30年3月31日)までに研究代表者、分担者の論文、および4年間にわたる計18回、発表者のべ40名の研究要旨・資料をほぼ取りまとめることができた。中央アジアで展開した釈迦・弥勒・阿弥陀信仰の美術について、インド、ガンダーラとの比較、そして中国からも比較した内容を含めて、その生成と発展の大枠を提示する内容とすることができた。しかし、本報告書は700ページにのぼる大著となり、編集作業に多くの時間・労力を要したため、刊行は平成30年度5月の予定としている。中央アジアでは多くのオアシス国家(都市)によってそれぞれの地域性と、交流による繋がりがあり、それだけに仏教の信仰と美術の研究も複雑な様相を呈し、困難な面も少なくなかったが、おおむね当初の目標を達成することができている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、現在作成中の報告書の刊行(平成30年5月予定)をもって一区切りとなる。本研究の目標は(1)中央アジア仏教美術の実地調査、(2)本研究に関わる資料(主に写真資料)の収集と整理データ化、および(3)研究の遂行にあり、おおむね当初の目標を達成することができたが、なお不十分な点も少なくない。(1)の実地調査に関しては、中央アジア諸地域の政情不安もあって現地調査が十分に行えなかったことは残念であり、政情の安定を見つつ今後推進したい。(2)写真を主とした資料の収集はかなりの程度進んではいるが、その整理とデータ化については十分とは言い難い箇所があり、引き続きデータ化を行い、一層の充実化を図る。(3)の研究に関しては、本研究のテーマである「釈迦信仰、弥勒信仰、阿弥陀信仰の美術の生成」について、釈迦信仰、弥勒信仰に関しては大きな成果となったが、比較すれば阿弥陀信仰の中央アジア美術に関わる研究については、その資料が大層限られていることもあって不十分なものと言わざるを得ない。今後は阿弥陀信仰の美術についてより多角的な視点から取り組む。 本研究のテーマは多岐にわたるので、十分な成果をあげるにはなお多くの時間を必要とするが、基礎的な研究基盤ができたことは大きな収穫である。今後はさらに実地調査を重ね、美術作品の基礎データを充実させること、および仏教学、歴史学の研究と連携することによって美術と仏教信仰の関わりをより具体的に明らかにすることが課題である。その推進方策としては、釈迦・弥勒・阿弥陀信仰のどのような側面を問題にするか、テーマを絞って研究を実施することが成果をあげるうえで重要と考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
はじめに記したように、本研究の到達目標の一つは成果をまとめた最終報告書の刊行であった。平成29年度末には本報告書は700ページにのぼる大冊となる見通しとなり、データ整理や編集作業に多くの時間と労力を有することが予想されたため、より完全な内容での刊行を期して刊行は平成30年5月とし、作成費を平成30年度に繰り越した。このため、これまでの調査の概要、および関連する研究代表者、分担者の論文、研究発表者による要旨・資料をほぼまとめることができた。また、本研究に関する資料収集についてもデータ化を進めてより完全な内容とする予定である。
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