本年度はドイツや首都圏でのオペラ上演の動向などに関して、月に一回程度を目安にして、市ヶ谷の法政大学辻研究室にて研究代表者・分担者の意見・情報交換を行った。また以下の劇場・音楽祭・催しについての調査を行い、統計、公開資料からはわからない公演の雰囲気や関係者の取組への意識などを探るとともに、運営の実態や現場の声を収集した。野薔薇座公演(広島、7月)、バイロイト音楽祭(8月)、広島オペラ・アンサンブル(9月)、広島オペラルネッサンス(11月)、ラインラントプファルツ州文化省、マインツ州立劇場、ハイデルベルク劇場、ハイデルベルク市役所文化局、マンハイム国民劇場、広島シティ・オペラ(以上3月)。 また今年度は研究最終年度に当たる為、研究成果のとりまとめとして「オペラ、劇場、地域――日独比較からみえてくるもの」と題したシンポジウムを3月25日に開催した。ここでは研究代表者・分担者それぞれが課題について発表するとともに、関根礼子氏(昭和音大オペラ研究所)、石田麻子氏(同)のゲストスピーカーに講演を行っていただくとともに、会場も含め活発な意見交換を行った。 三年間の研究成果を広く世に問うために、研究会においては夏前から編著作の出版計画を練り、秋より出版社との交渉を行ってきた。これまでの調査に基づきドイツに中・小規模の劇場の運営実態をその地域性などから解き明かすとともに、国内の比較事例として「オペラの町」を掲げる広島の状況を扱う。またそれらを理論的に分析する視座を提供するとともに、世界のオペラ界の動向や市民オペラがさかんな日本の特徴など、幅広い視点から論じる予定である。現在、編集者との内容面を含めた打ち合わせが終了し、2018年中の刊行を目指してこれから各人が原稿の執筆に入るところである。
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