本研究では公演内容・財務・経営・地域性・歴史性などを包括する「劇場圏」という概念を用い、オペラを対象に日独比較を試みた。全土に80以上のレパートリー劇場があるドイツと、未だに貸館中心のホールが多い日本とは状況が大きく異なるが、劇場をコミュニティとの関連で捕らえることで、そこに様々な共通性があることが分かってきた。劇場がより意義のある文化施設になるには地域コミュニティとの密接な関係が欠かせず、よい劇場は必ず地域の文化的シンボルとして機能している。ドイツの中小の劇場の調査を通じて明らかになったこの特性は、日本の地域の文化創造においても、指針となりうるだろう。
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