研究課題/領域番号 |
26284036
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
大橋 毅彦 関西学院大学, 文学部, 教授 (60223921)
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研究分担者 |
井口 淳子 大阪音楽大学, 音楽学部, 教授 (50298783)
榎本 泰子 中央大学, 文学部, 教授 (00282509)
関根 真保 立命館大学, 言語教育センター, 嘱託講師 (20708698)
藤田 拓之 同志社大学, 人文科学研究所, 嘱託研究員 (80572297)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 芸術諸学 / 上海租界文化 / 劇場芸術 / 1940年代 / ライシャム・シアター(蘭心大戯院) / 多言語資料 |
研究実績の概要 |
租界都市上海の劇場文化は1920年代から30年代前半にかけて映画産業を中心として最盛期を迎えたが、30年代後半の第二次上海事変からアジア・太平洋戦争期にかけて変質・衰微していったとされている。だが、上海の1940年代とは、そうした文化的空白ないし断絶のみが際立つ時代なのだろうか。平成26年度の本研究は、平成23~25年度にかけて行った基盤研究(B)「上海租界劇場文化の歴史と表象ーライシャム・シアターをめぐる多言語横断的研究ー」の研究方法と成果を受け継ぎながら、さらに調査研究のターゲットとする時間軸をこの1940年代前半期に据え、ライシャム・シアターをめぐる諸問題を「ル・ジュルナル・ド・シャンハイ(法文上海日報)」、「ノース・チャイナ・デイリー・ニュ―ス(字林西報)」、「チャイナ・プレス(大陸報)」、「大陸新報」といった複数言語資料をもとにして、国内外の研究者との情報交換も頻繁に行いながら多角的に考察した。そして、当初の実施計画に掲げていたとおり、「アジア遊学」(勉誠出版)の特集号として平成27年4月にその成果を公にすべく、研究員全員がそれぞれの論考をまとめた。さらにそれと並行して、中国上海の上海人民出版社から本共同研究の成果を出版する話も進み、こちらの方は各自の論考に加えて、巻末には1941年から45年にかけての詳細な「蘭心大戯院劇目一覧表」も載せた学術書『上海租界与蘭心大戯院』を平成27年1月に刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、研究成果を出版形態で公表することは国内出版物の「アジア遊学」で特集を組むかたちで行うことを考えていたが、平成26年の9月の段階で上海人民出版社との間でも出版についての話がまとまり、前者の内容との差異化もはかりながらそちらの作業にも取り組んだ結果、平成27年1月の時点で『上海租界与蘭心大戯院』と題して刊行されるに至った。題名が示唆するように、本書は上海租界の劇場文化を概説風に扱ったものとは違い、ライシャム・シアターという一つの劇場を入口としてそこから上海租界劇場文化の持っていた多様な問題系に迫ることを目的とした専門的な学術書としての価値をもつものである。また、本書の編集の過程で上海の研究者との交流も当初予想していた以上に活発になり、上海社会科学院が新たに刊行を企てている学術雑誌「上海学」の第二期にも、『上海租界与蘭心大戯院』所載論文のうち2本の論文が紹介(掲載)される運びとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、研究の関心を1940年代後半の上海租界劇場文化の継承期・拡張期に向けていくことがまずは挙げられる。「惨勝」後、内戦期に突入していく時期の上海に目を向けてそれを考えていくとともに、日本に引き揚げてきた租界劇場芸術の継承者たちの活動の諸相を、東京ならびに関西でのそれも含めて検討していく。さらに、上海と日本以外の地域における租界劇場芸術関係者たちの動向に関してのデータの蓄積を図るため、前年度に引き続きニューヨークのYIVO所蔵資料の活用も心がける。また、かねてよりの課題であるロシア語資料を用いての資料調査と分析についても、平成27年度には研究経費(人件費)を有効活用して実質的な活動に入る計画を策定、実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
知識・情報の共有を目的として今年度の研究成果物である図書(『上海租界与蘭心大戯院』)を国内外の研究機関・研究者へ送付することにしていたが、刊行時期が今年度の終盤になったことに加え、送付先の調査等に時間を要したため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
図書(『上海租界与蘭心大戯院』)の購入費用と、国内外の研究機関・研究者・図書館・文学館へ送付する際の郵送費用に充てる。
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