研究課題/領域番号 |
26284038
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
川口 隆行 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (30512579)
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研究分担者 |
中谷 いずみ 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (10366544)
野坂 昭雄 大分県立芸術文化短期大学, 国際総合学科, 准教授 (20331936)
楠田 剛士 北九州工業高等専門学校, 総合学科, 講師 (20611677)
ゴーマン マイケル 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (20625892)
高 榮蘭 日本大学, 文理学部, 准教授 (30579107)
中野 和典 福岡大学, 人文学部, 准教授 (40455176)
松永 京子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50612529)
高野 吾朗 佐賀大学, 医学部, 准教授 (60404167)
山本 昭宏 神戸市外国語大学, 外国語学部, 講師 (70644996)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 原爆文学 / 核表象 / 冷戦 / 表象システム / アメリカ / 東アジア |
研究実績の概要 |
核・原爆と表象の関係、「原爆文学」と表象システム総体との関係を多角的に問い直すという当初の目標は、順調に達成されつつある。個々の作品分析のほかに、それらをメディアや社会運動、国際情勢との関わりにおいて位置づけ、検証する作業を進めた。
具体的には、原爆文学研究会と共催し、「戦後70年連続WS」を企画した。第一回は2014年8月に、WSⅠ「原爆文学古典再読1―井伏鱒二『黒い雨』」、WSⅡ「原爆体験の〈表現〉と〈運動〉―60・70年代を中心に」、第二回は同年12月に、WSⅢ「古典詩と現代詩の協奏―実作者を迎え」、WSⅣ「カタストロフィと詩」、第三回は2015年3月に、WSⅤ「原爆文学古典再読2―佐多稲子『樹影』」、WSⅥ「長崎原爆と復興の言説」を、それぞれ開催した。登壇者は、科研代表者、分担者のほかに、齋藤一、キアラ・コマストリ、小沢節子、道場親信、新井高子、柿木伸之、高橋由貴、坂口博、村上陽子、篠崎美生子、新木武志、桐谷多恵子である。日本文学、英文学、哲学・美学、歴史学、社会学、詩人といった多彩なメンバーによる討議は、科研の目標を達成する十分な足場作りとなった。すでに第一回の内容は、全報告を『原爆文学研究』13号に掲載済みである。第二回、第三回の内容は、2015年8月に開催予定の第四回とあわせて、H27年度に刊行される『原爆文学研究』14号に掲載予定である。
またこれらのWSのほかに科研単独の会合を三回開催し、互いの研究成果の共有、データーベースの集積をはかった。さらには研究代表者、研究分担者、協力者個々の役割分担に応じて、個別の研究発表、論文や著書の刊行も順調になされており、平成27年度にはまだ活字化されてない研究成果も多く公表する予定である。こうした積み重ねのなかで、ナショナルな枠組みを超えた「原爆文学」の再定義、新たな問題の共有が可能になるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本科研の最終成果の公開方法として『原爆文学事典』を目標としている。核・原爆に関する幅広い文学文化的事象の堆積を検証、現代の諸問題を新たに「発見」しえる内容、という大きな目標を掲げているが、「戦後70年連続WS」の充実した内容、各個人の調査考察の進展などによって、全体のコンセプトの決定、項目洗い出しが当初の予定よりも順調にすすんでいる。検討の結果、最終成果の在り方として、事典的性格もそなえた大部のガイドブックを目指すことに決定した。
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今後の研究の推進方策 |
2015年8月に「戦後70年連続WS」を、2015年12月には国際会議「核・原爆と表象/文学」(仮題)を開催することによって、これまでの研究の中間的総括を行っていく。後者はアメリカ、韓国、台湾在住の研究者、実作者を招聘する。WS、国際会議を開催することで新たな問題の共有を図り、それによって、最終成果として掲げる『原爆文学事典』の項目決定、さらには執筆作業に着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、H26年度とH27年度にそれぞれ国際会議の開催するつもりであったが、研究内容を実質的に進展させるには、H26年度からH27年度に複数回のワークショップを開き、そのまとめとしてH27年度に大規模な国際会議を行うほうがよいと判断した。そのため、国際会議のために使用予定であった人件費・謝金を中心に繰り越しが発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した研究費は、主に国際会議の人件費・謝金、旅費、その他(予稿集印刷代)に使用する予定である。
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