研究課題/領域番号 |
26284040
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
牧野 和夫 実践女子大学, 文学部, 教授 (70123081)
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研究分担者 |
高橋 悠介 神奈川県立金沢文庫, 学芸課, 学芸員 (40551502)
野沢 佳美 立正大学, 文学部, 教授 (80277748)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 宋版 / 大蔵経 / 入れ木 / 東禅寺版 / 開元寺版 / 刻工 / 印面 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本版本学の蓄積を用いて日本で行いうる「日中共有」の根本的な基礎研究である点に特色があり、この特色を活かすべく、研究代表者牧野は関連する学会・研究会などに積極的に参加した。研究分担者・協力者も、各々の主たる関連テーマに即して関連学会で発表を行った。 調査は、前課題の深化を意図しており、調書採りは目録報告書の刊行を目指した補充調査で、問題点の洗い出し、記入漏れの確認などのほか、印面の「良・悪」について記述の徹底を図った。本源寺蔵本については、細かな点に留意した見本撮影も行った。 本源寺:本課題の研究調査の軸になる一切経で、計3回の補充調査を行った。2014年7月20日~22日、11月17日~18日、2015年2月22日~24日、各調査参加者4~5名で、約750帖をおえた。醍醐寺:8月18日~21日、調査参加者5~6名で、308帖の調査をおえた。本蔵は、ほぼ原装なので函収納帖(主に10帖・字音1帖)を積み上げた高さを計測し、印面の「良・悪」についての記述も行った。知恩院:修理済みの2函(黎・育)のみの調査を行った。2014年12月23日~24日、2名で22帖をおえた。軸となる本源寺調査は、2012年より、補充調査に着手、2014年末までの終了を予定していたが、2015年中に延びることとなった。補充調査修了後、直ちに精細な印面調査に着手するが、印面調査の基準などについての検討材料となる資料を若干撮影蒐集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、実物としての経(典籍)調査を必須としており、その調書から得られるデータを整理し分析する情報が重要である。本年度の調査は、軸となる本源寺蔵一切経の調査が二巡目の補充調査の段階になり、問題点の洗い出し、記入漏れの確認などのほか、印面の「良・悪」について記入する項目を用意したが、記述をいかに徹底させるか、検討段階にある。この点については、予想通りに進展している、と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、刻工の活躍時期の推定を進めること、その際に留意すべきことは刷印時の印面の「刷りの具合」である。この問題のある程度の解明に向けて調査の精度をあげなければならない。 醍醐寺蔵一切経の目録が刊行され、新たな検討課題が明らかになった。相互の調査データを活用して、個々の課題の解明を期した調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、予定していた調査先のご都合(修理中の経典の扱いや、典籍類の修理計画などの進展状態)などを考慮し、調査期間・参加者人数などを縮小する事態が生じたことが大きい、と考えられる。 また、本源寺調査に注力する比重を重くした関係で、更に遠隔の調査先(九州など)への調査を見送った経緯もあり、旅費などに次年度使用額を残す一因となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は、本源寺蔵大蔵経の目録公刊に向けた補充調査に注力すべく、本源寺調査の回数を可能な限り増やす方向で計画を進める予定である。と同時に今後の計画として、大蔵経舶載並びに舶載後の展開について意教上人頼賢の活動を例に、鎌倉時代後期を軸に調査する為の資金として活用する。 また、九州方面などの調査は今後の調査先との相談の上で可能ならば、旅費などを振り分けることも考慮したい。
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