研究課題/領域番号 |
26284043
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
下河辺 美知子 成蹊大学, 文学部, 教授 (20171001)
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研究分担者 |
巽 孝之 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (30155098)
舌津 智之 立教大学, 文学部, 教授 (40262216)
日比野 啓 成蹊大学, 文学部, 教授 (40302830)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マニフェスト・デスティニー / 情動 / 半球思考 / 環太平洋 / モンロー・ドクトリン |
研究実績の概要 |
四年間のプロジェクト三年目である平成28年度は、本研究の中心的テーマである惑星的想像力についてさらなる洞察を得ることができた。ことに、2010年~2013年にかけて行った基盤(B)「モンロー・ドクトリンの行為遂行的効果と21世紀グローバル・コミュニティの未来」の成果を結集した書籍『モンロー・ドクトリンの半球分割:トランスナショナル時代の地政学』(彩流社)を出版したことは、本プロジェクトの研究目的をさらに明確にするとともに、テーマの発展推進の道筋をつけるのに大いに役にたった。19世紀アメリカの領土拡張主義スローガン「マニフェスト・デスティニー」の本質については、研究会において直接・間接に言及されたことにより、アメリカの歴史の文脈と情動の中にその本質が見えつつある。 平成28年度は、アメリカの位置を地球規模で見直す企画としての研究会、博論ワークショップなどを計4回行った。①研究会:田ノ口正悟「ハーマン・メルヴィルの「虚無の力」:『ピエール』にみるアメリカ民主主義の破壊と再創造」2016年12月20日 ② 「Dos Passosと兵士の身体」2017年2月24日 基調発表:越智博美 ワークショップ:徳永裕、志賀俊介、桐山大介 ③ 研究会:石原剛「翼の福音、あるいは呪われた凶器:リンドバーグと飛行の物語」2017年3月10日 ④ 博士論文ワークショップ:ファリード・ベン=ユーセフ”(UCバークレー博士課程)”The Frontiers of Border Narrative under Trump’s Presidency”ディスカッサント:細野香里、冨塚亮平 2017年3月24日 平成28年度の研究代表者、研究分担者四名の業績は、著書9点、論文6点、学会発表10回(招待講演を含む)に及ぶ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三年目にあたる平成28年度は「惑星的想像力」とその情動的背景を地球規模の地政学的観点から分析するという目標が定められていた。まず情動についての先行研究を概観した上で、アメリカ国家の外交政策を検証するために使える情動研究の方法を探った。「明白なる運命」のレトリックが生み出された社会的・政治的・文化的経緯をつきとめ、それがナラティヴとして19世紀から21世紀のアメリカで変奏されていく歴史的経緯を明らかにするという目的については、国内外の研究者、ことに情動をテーマとする研究者と交流を重ね、情動の文化史的意味について本プロジェクト独自の解釈を探っている。 研究代表者および3人の研究分担者は、2010年4月~2014年3月の四年間でおこなった基盤(B)「モンロー・ドクトリンの行為遂行的効果と21世紀グローバル・コミュニティの未来」の成果本に各々論文を寄稿したが、その成果本が2016年6月に出版された。このプロジェクトは、本プロジェクト(「マニフェスト・デスティニー」)の基盤となるもので、この成果本を出版したことにより、現在進行中の本プロジェクトにとって研究推進の方向を示す大きな推進力がもたらされた。 また、四名の共同研究者は、各々、国内外での研究発表やシンポジウムでの発表を精力的におこなってきた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は「マニフェスト・デスティニー」のレトリックの歴史的意義についての総括を行い、それが、「情動」という概念とどのように関係するかにについての結論をさぐり本プロジェクトの総まとめとしたい。「情動」というテーマが21世紀グローバリゼーションの運動の中においてどのような意味を持ち、それが西半球という空間に位置することを宣言した19世紀アメリカのレトリックとどのようにつながっているかについてプロジェクトメンバー間で討議をしたうえで、成果本の中心テーマを設定し、各自の原稿を準備し始める。 また、今年も4回の研究会を企画しているが、そこで取り扱われる様々なトピックを通して、南北アメリカ大陸を環大西洋・環太平洋文化圏に置くことによる地理的想像力について議論を深め、南北アメリカ大陸を、対ヨーロッパとの関係(環大西洋的連環)および対オセアニア・アジアとの関係(環 太平洋的連環)の二つの空間に置き、「明白なる運命」の持つ情動的機能をさぐることを目指している。 研究代表者および三人の研究分担者による個人ベースの研究と、研究会・学会発表やシンポジウムの開催を通じての研究成果共有を行う予定。4人のメンバーがそれぞれ海外の研究機関、アーカイヴへ資料調査に出張する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月10日の研究会の謝金の支払いが新年度になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに謝金の支払いはすんでいる。
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