研究課題/領域番号 |
26284062
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
前川 喜久雄 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語資源研究系, 教授 (20173693)
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研究分担者 |
森 大毅 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10302184)
ROSE Ralph 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (30404916)
河原 英紀 和歌山大学, システム工学部, 教授 (40294300)
渡辺 美知子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, コーパス開発センター, 研究員 (60470027)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フィラー / コーパス / 自発音声 / 母音の調音 / 英語 / 中国語 / 日本語 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
日本語、英語、中国語のフィラーについて音声学的な分析を実施した。日本語については『日本語話し言葉コーパス』コアに含まれるすべての母音型フィラーおよび対照群として選択した通常の語彙項目中の母音、合計22万個の音響分析を実施した(この分析はプログラムで自動的に実行した)。分析の結果、フィラー中の母音と語彙項目中の母音には多くの点で統計的に有意な差が生じていることが判明した。例えば母音「エ」の場合、フィラー中の「エ」は語彙項目中に比べて、第1フォルマント周波数が高く、振幅が小さく、スペクトル傾斜が大きく、jitterが大きい傾向にある。これによってフィラーと語彙項目では母音の調音に組織的な差があるという仮説が部分的に裏付けられたことになる。 英語についてはSanta Barbara Corpusおよび自作コーパスを利用して、英語の代表的フィラーである"uh"と"um"の差異を音声学的に検討した。その結果、両者の生起は部分的には予測可能である可能性があることが判明した。 中国語については、フィラーに関してピッチの指定が与えられているかどうかの問題等を検討した。中国語は声調言語であるが、大変興味深いことに、中国語(台湾普通話)のフィラーのピッチは前後の音声環境からかなり確実に予測できることが判明した。 これらの成果は2014年12月に台湾中央研究院で開催した公開研究会で口頭発表した。また日本語に関する成果は2015年3月に開催された日本音響学会での口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では手作業での実施を想定していたスペクトル傾斜の推定をケプストラム係数を利用して自動的かつ頑健に実行できる新手法の開発に成功したことにより、母音の音響分析を自動化することに成功した。そのため、第2年度に実施する予定であった分も含めた日本語データの音響分析を初年度にほぼ完了することができた。 中国語に関する分析も2年度以降に実施する予定であったが、台湾中央研究院の協力者の努力で初年度によい成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
日本語については、初年度に確認できた母音の生成上の差異が、パラ言語情報の差に起因しているとの仮説を検証するために、フィラー中の母音を、発声様式(phonation type)によって分類したうえで再分析することを試みる。そのために初年度に測定した音響データから機械学習ベースで発声様式を推定することを試みる予定である。またピッチの推定に困難が大きいcreaky phonationにおいてもピッチを頑健に推定可能な新推定法の開発に努める。 英語と中国語については初年度の予備的分析を継続・発展させる。 研究成果を国際学会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
音響分析の自動化が予想以上に捗ったことから、当初使用を想定していたアルバイト謝金が不要になった。その分で、分析用PCの購入を検討したが、適当な仕様のものを見つけることができなかったので、来年度に繰り越して利用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越し分を利用して、必要な仕様をみたした分析用PCを購入する予定である。
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