研究課題/領域番号 |
26284066
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
高田 智和 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変化研究領域, 准教授 (90415612)
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研究分担者 |
石塚 晴通 北海道大学, その他部局等, 名誉教授 (10002289)
豊島 正之 上智大学, 文学部, 教授 (10180192)
守岡 知彦 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (40324701)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 漢字字体 / 字体規範 / 字体編年 / 漢字字体規範史データベース / 宋版 / 宮廷写経 / 開成石経 / 五山版 |
研究実績の概要 |
本研究は、本文テキスト・文字表記・書物の様式等が確立した中国宋版以降の印刷文化の影響下において、日本の文字規範が如何に形成され変遷してきたのかを実証的に明らかにするために、鎌倉時代から近世初期の日本の漢字(中国印刷本の模写本及び日本印刷本での用例整理に基づく)と、同時代の中国・韓国の漢字(公的性格・規範性の高い印刷本での用例整理に基づく)について、文字規範の影響関係と史的変遷を通覧する資料体を構築し、文字規範の編年を確立する。また、本研究は、文献資料に出現する文字字形のデジタル記述法を検討し、異体字集約の方式を明示した上で国際的・学際的な合意形成を行い、資料体の高度利活用をはかることを目的とする。 平成27年度は以下の活動を行った。(1)東洋文庫や京都大学付属図書館所蔵の日本中世印刷本の書誌調査を行った。(2)(1)の書誌調査に基づき京都大学付属図書館所蔵普済寺版の一部について用例整理を行った。(3)宋版出現以前の書写による文字規範(初唐標準字体)を示す長安宮廷写経について、「漢字字体規範史データベース」収録資料の一部を対象として、Unicode、IDS(Ideographic Description Sequence)、グリフウィキによるデジタル記述を試行・実践した。(4)(3)によって作成したデータを、守岡知彦(研究分担者)が運営する文字オントロジー(CHISE)に取り込み、一般公開を行った(http://www.chise.org/hng-ids-find)。(5)研究成果の公表として、シンポジウム「「字体と漢字情報」―HNG公開10周年記念―」(2015年11月21日-22日)を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「漢字字体規範史データベース」収録資料の一部を対象として、Unicode、IDS(Ideographic Description Sequence)、グリフウィキによるデジタル記述を試行・実践し、守岡知彦(研究分担者)が運営する文字オントロジー(CHISE)に取り込み、一般公開を行うなど(http://www.chise.org/hng-ids-find)、資料体の整備は順調に進んでいる。また、国立国語研究所共同研究プロジェクト(基幹型)「文字環境のモデル化と社会言語科学への応用」(代表:国立国語研究所・横山詔一)、科学研究費補助金基盤研究A「歴史的文字に関する経験知の共有資源化と多元的分析のための人文・情報学融合研究」(代表:奈良文化財研究所・馬場基)、人間文化研究機構連携研究「表記情報と書誌形態情報を加えた日本語歴史コーパスの精緻化」(代表:国立国語研究所・高田智和)との連携により、シンポジウム「「字体と漢字情報」―HNG公開10周年記念―」(2015年11月21日-22日)を開催し、日本語学・文献学だけでなく、歴史学・考古学・仏教学・心理学・情報学・日本語教育学など、分野横断的に字体と漢字情報について議論を行った。
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今後の研究の推進方策 |
資料体の整備を継続する。原本調査を行った典籍については、字体編年の記述に必要な書誌情報を追加していく。27年度に行った文字字形のデジタル記述法の適用を、優先順位を策定した上で、「漢字字体規範史データベース」収録のほかの資料にも広げていく。27年度に開催したシンポジウムの内容をまとめた研究論文集の編集を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
情勢不安定のため、フランス国立図書館を始め、27年度夏-秋に予定していた欧州での原本書誌調査(貴重書調査)を見合わせた。
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次年度使用額の使用計画 |
情勢を見極めるとともに、資料の所蔵機関との調整を行った上で、原本書誌調査(貴重書調査)を実施する。必要に応じて、調査先(国・地域)を変更するなど、柔軟な対応を行う。
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