研究課題/領域番号 |
26284073
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
舘岡 洋子 早稲田大学, 日本語教育研究科, 教授 (10338759)
|
研究分担者 |
池田 玲子 鳥取大学, 学内共同利用施設等, 教授 (70313393)
岩田 夏穂 政策研究大学院大学, その他の研究科, 准教授 (70536656)
近藤 彩 麗澤大学, 外国語学部, 教授 (90377135)
金 孝卿 大阪大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30467063)
広瀬 和佳子 神田外語大学, 外国語学部, 准教授 (60711752)
鈴木 寿子 早稲田大学, 付置研究所, 准教授 (00598071)
トンプソン 美恵子 (平野美恵子) 早稲田大学, 付置研究所, 准教授 (20401606)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 対話 / 教師研修 / 協働 / 実践研究 / 教師コミュニティ / 学び合い |
研究実績の概要 |
①対話型研修の実施と深まり 【北京】2014年4月の協働実践研究会を皮切りに、「ハブ的存在」といえるような3名の教師が誕生し、それぞれの強みを生かして活動をけん引している。現在は、北京支部の活動は、「講師提供型」から「持ち寄り型」に移行しつつある。中国では、本科研の代表者および分担者が2014年に執筆した「日本語教育 協働学習 理論と実践」という書籍も普及しつつあり、現場の教師たちの学びたいという意欲を後押ししている。 【台湾】もともと協働学習を実践している教師が複数名いたが、2014年11月の台湾支部の再設立から活動が活発になり、2015年度には支部メンバー自ら、台湾における科研も取得し、日本からも分担者らが招聘され共同研究を行っている。 【北京と台湾の協働】上記、北京支部と台湾支部のメンバーを3名ずつ、本科研により招聘し、協働実践研究会特別シンポジウム「教師による協働の可能性と展望」を実施した(2016年2月20日於早稲田大学)。これにより「対話型教師研修」の2つのケースの相違やあり方について議論を深めることができた。北京は3名の「ハブ的存在」が中心となっているが、台湾は必ずしも固定的な「ハブ的存在」がいるわけではなく、教師会など今までの教師コミュニティの歴史的変遷を反映して現在があることがうかがえた。地域によって支援のあり方も変わってくることが確認できた。 【東京】この2年間に行った「対話型教師研修」の「持ち寄り型」セッションを総括し、雑誌『イマ×ココ』に実践研究として投稿した。
②教師の振り返りの充実 上記は教師コミュニティに関する研究であるが、それと同時に、教師一人ひとりの内省を深める研究も行われた。具体的には、ティーチングポートフォリオに関する3回のワークショップの実施で、現在は学びの内実についての分析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は実際に「仮説生成→対話型教師研修(講師提供型および持ち寄り型)の実施→検証→改善」を行うことによって、「対話型教師研修」とは何かを検討する実践研究である。2年目の目標は、①「対話型教師研修」を実施し、その中身を記述し検討していくことと②教師のあり方を検討することであった。 ① 計画通り、中国(北京)、台湾、東京については「対話型研修」の実施とともにハブ的存在の誕生があり、それぞれの形は異なるが発展してきた。また、以下にあげるように、いくつかの新規開拓地域もあった。【インドネシア】国際交流基金の協力を得て、5月5日にまずは「協働学習の勉強会」を開催した。それを受けて、9月にはアルアザール・インドネシア大学で開催されたインドネシア日本語教育学会において、分担者らが講演とワークショップを行った。【ベトナム】国際交流基金の協力も得て、何回かコンタクトをしており、今後、協働実践研究会という形で「対話型教師研修」を開催する予定である。【バンコク】代表者が今まで数回、国際交流基金で講演をしていることもあり、2015年9月に「協働実践研究会」をバンコク、チュラーロンコーン大学で開催した。日本側からの全面支援によって実現したが、今後、バンコクのマンパワーだけでは継続が難しいかもしれない。 ②ティーチングポートフォリオに関するワークショップを実施し、教師たちの今までの授業実践を内省する場を設けた。9月6日(シーナカリンウィロート大学@バンコク)、12月19日(早稲田大学)、3月23日(早稲田大学)に実施し、現在は録音データを分析中である。 上記の2つの観点から「対話型研修」という場づくりが実現したと同時に、教師の成長について内省データから分析ができるようになったことについては、本研究の達成度として大きく評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
①北京、台北、東京で「対話型教師研修」の深まり確認できたが、それぞれのコミュニティの「発達」の段階やあり方は異なっている。各ケースが置かれている状況、国や地域の教育政策の影響、教師たちの学び合いの風土や歴史の違い、参加する教師たちの個別的な事情など、いくつかの要件が異なっているためである。2015年度は、特に北京と台湾について、それらの違いを議論することができたが、拡大した他の地域も含めて、今後の進展についても引き続き検討していく必要がある。
②上記の地域以外にもインドネシア、愛媛、韓国など今後、学び合いコミュニティが生成できる可能性のある地域がる。それらの地域と連携を密にしつつ、ケースを増やしていく予定である。
③ティーチングポートフォリオのワークショップを試行錯誤で始めた。教師たちに今までの授業を振り返ってもらい、現場で行っていることと自分の教育理念を他者(自分以外の教師)との対話を通して再確認するようなワークショップである。時間はかかるが他者との対話を通してこそ、自分の自明だと思っていた教育に対する考え方が可視化されるようになった。今後は、現在すでに手をつけているワークショップの展開スタイル自体の検討と同時に、対話データの分析を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、科研費を使用してバンコクと東京で国際的研究会を実施した。そのための移動や宿泊費について、バンコクに関してはすでに別件でバンコク滞在中であったり、東京に関しては海外からの発表者に対して旅費のみの支給ですんだりしたため、予算よりも少ない出費であった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、インドネシアにおいて日本語教育国際大会が開催されるため、本科研メンバーたちもいくつかの発表を予定している。そのための移動と宿泊費に使用する予定である。
|