研究課題/領域番号 |
26284081
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
平川 眞規子 文教大学, 文学部, 教授 (60275807)
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研究分担者 |
武田 和恵 文教大学, 文学部, 准教授 (10331456)
Snape Neal 群馬県立女子大学, 国際コミュニケーション学部, 准教授 (10463720)
福田 倫子 文教大学, 文学部, 准教授 (20403602)
平川 八尋 東京工業大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40218772)
Matthews John 中央大学, 文学部, 教授 (80436906)
梅田 真理 群馬県立女子大学, 国際コミュニケーション学部, 講師 (80620434)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 第二言語習得 / 継承語 / 眼球運動測定 / 言語理解 / 再帰代名詞 / 日本語 / 英語 / 通言語的影響 |
研究実績の概要 |
研究2年目にあたる平成27年度は、眼球運動測定装置(EyeLink II) を用いた調査を実施するために、海外の研究者とも情報交換を行いながら、日本語の再帰代名詞「自分」の先行詞の解釈に関する実験を立案し、その予備実験を行った。8月にはイリノイ大学教授のSilvina Monrul 氏との研究会議をもち、韓国語を対象とした眼球運動測定研究の最新の成果の報告ならびに本実験への助言を得ることができた。Montrul 氏の研究では、韓国語の継承語話者と母語話者を対象とし、3種類の再帰代名詞の解釈について調べている。本研究では、ハワイ大学言語学科の協力を得て、ハワイに在住する日本語継承語話者を対象に、日本語の再帰代名詞の「主語指向性」に焦点を当て実験を行った。また、その他の特徴として、節外にある名詞句を先行詞とする「長距離束縛性(logophoricity, empathy) 」については、真偽値判断法を用いて、日本語母語話者および中国語母語話者で日本語を第二言語として学習する者を対象に予備調査を行った。 併行して、本研究の基盤となる前科研プロジェクトに引き続き、日本語のテンスとアスペクト、ナラティブ構造におけるトピックの導入と維持に関する研究も、中国語、タガログ語を母語とする日本語学習者と日本語母語話者のデータ比較、日本語を母語とする英語学習者と英語母語話者のデータ比較を継続した。また、英語と日本語の尺度含意(scalar implicature)に関する調査も継続してデータ収集を行った。 日本語母語話者による英語の習得に関しては、冠詞の総称性、主語になり得る名詞句、形容詞の語順について、通言語的観点から調査を行い、それらの結果は、ヨーロッパ第二言語習得学会やボストン大学言語発達学会 にて口頭発表やポスター発表で成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
眼球運動測定装置を用いた実験の完成に時間を要したこと、また実験を実施する上で継承語話者を対象にしたが、ハワイ大学での実施に倫理委員会の許可が降りるのに予定以上の時間(約3ヶ月)がかかり、調査実施の直前に許可が降りるという事態となった。そのため、調査参加者を募るための期間が非常に限られてしまい、十分な宣伝ができず10名の参加者に留まった。また、その参加者の言語背景は広範囲にわたるため、一グループ化してのデータ分析が難しいことが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの成果は、8月にEuropean Second Language Association(フィンランド), Pacific Second Language Research Forum(日本)での発表を予定している。 眼球運動測定に関する本実験を、まず日本語母語話者を対象として行う。その後、日本語の継承語話者、第二言語学習者も対象として実施し、その結果を分析、考察する。 ハワイ大学言語学科の研究者との共同研究として、日本語、中国語、タガログ語、英語の関係節の習得に焦点を当てた調査を実施する予定である。例えば、フィリピンより来日し日本に在住するフィリピン人は、タガログ語の継承語話者である。日本では、継承語であるタガログ語のインプットが限られていると考えられるが、この状況は日本人英語学習者のように、第二言語のインプットが限られている第二言語学習者のおかれている言語環境に類似する。第二言語の習得におけるインプットの質や明示的指導の効果に関する研究を継続し、母語話者、継承語話者、第二言語学習者のもつ言語知識について通言語的観点から考察していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末にハワイ大学にて実施した実験参加者数が当初の予定よりも大幅にヘリ、謝金額が減少したため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年9月に再度ハワイ大学およびその他の機関にて、追実験をする際の参加者への謝礼金とする予定。
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