研究課題/領域番号 |
26284115
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤尾 光春 大阪大学, 文学研究科, 助教 (90411694)
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研究分担者 |
高尾 千津子 東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (00247264)
向井 直己 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 研究員 (00725400)
山本 伸一 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 研究員 (00726804)
野村 真理 金沢大学, 経済学経営学系, 教授 (20164741)
恒木 健太郎 専修大学, 経済学部, 講師 (30456769)
宮崎 悠 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (40507159)
後藤 正英 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (60447985)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ユダヤ / 自治 / ロシア / ポーランド / オーストリア / ドイツ / ディアスポラ |
研究実績の概要 |
初年度は、近世から近現代にかけての中・東欧・ロシア地域におけるユダヤ人共同体の自治的発展に関する総合的研究を開始するに当たって、研究分担者および連携研究者と計4回にわたる会合をもち、当研究プロジェクトの方向性について議論するとともに、各研究者は基礎的な資料の収集と文献の読み込み作業を中心に活動を行った。 今年度に当科研プロジェクトの主催で開催したワークショップおよびシンポジウムは以下の4つである: ①第一回公開ワークショップ「戦間期におけるポーランド・ユダヤ関係史――ワルシャワ・ゲットー「地下史料」の背景」(宮崎悠、討論者:細見和之)5月17日(於:大阪大学中之島センター) ②特別講座「「ウクライナ革命」とユダヤ人――プーチン、政商オリガルヒ、反ユダヤ主義」(赤尾光春)7月21日(於:大阪大学中之島センター) ③第二回公開ワークショップ「シャブタイ派の「異端」をめぐるユダヤ人共同体の反応と対異教徒関係」(山本伸一)10月19日(於:東京麻布台セミナーハウス) ④シンポジウム「第一次世界大戦とユダヤ人」1月31日(於:大阪大学中之島センター):「第一次大戦からワイマル期にかけてのドイツ・ユダヤ人」(長田浩彰)/「ユダヤ人――帝国内少数民族から国民国家内少数民族へ」(野村真理)/「東部戦線とユダヤ人の受難――S・アンスキーの『ガリツィアの破壊』と記憶のポリティクス」(赤尾光春)/「ユダヤ・ナショナリティと無国籍性――第一次世界大戦後のユダヤ移民」(向井直己)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の課題は、近世から近現代にかけての中・東欧・ロシア地域におけるユダヤ人共同体の諸特徴を把握し、ユダヤ社会内外の諸要因を通じた自治形態の変遷を跡づけることにあったが、とりわけ、①ホロコーストとの関わりからポーランド・ユダヤ関係史を、②2014年初頭以降に生じたウクライナ東部地域の紛争との関わりからウクライナ・ユダヤ関係の変遷をそれぞれ再考したほか、③去年100周年を迎えた第一次世界大戦におけるユダヤ人共同体の崩壊過程とともに、大戦後の新たな国際政治秩序の確立とともに生じたユダヤ人社会の再編過程の分析を通じて、近代化と同化を経た20世紀の戦乱を通じてユダヤ自治の要請が当該諸地域のユダヤ人の政治に与えた影響関係について具体的に考察することができた。また、近世については、シャブタイ派の「異端」をめぐって生じたユダヤ人共同体の反応と対異教徒関係を通して近世のユダヤ人社会の自治形態の諸特徴を素描することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の課題は、各ユダヤ人共同体の自治形態とその変遷の比較を通して、アシュケナージ・ユダヤ社会の多様性とともに、一つの文化圏としての共通性や自律性の次元を浮き彫りにすることである。初年度と同様に文献の収集・分析を継続しつつ、各対象地域のユダヤ人の共同体的営みの相互比較を通じて、ユダヤ人の自治が単に一共同体の外部に対する自律性の問題にとどまらず、時代・地域を越えて広がってゆく一定の文化的凝集力をもった原理としても機能していたという側面を描き出す。 計四回の研究会合を開いてユダヤ自治の諸側面に関する議論を深めるとともに、各会合ごとに開催する予定の公開ワークショップを通じて、研究分担者および連携者らにより最新の研究成果を発表してもらうことにより、情報の共有化と議論のさらなる活性化を図る。 なお、山本伸一氏の離脱(海外学振採択のため)に伴い、近現代のユダヤ自治の要であるシオニズムとブンドの専門家である鶴見太郎氏と西村木綿氏に新たに分担者として参加していただく予定である。これにより、近代から現代にかけてのユダヤ自治の再編過程のより緻密な分析が可能になることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は、主として研究計画の策定に時間が費やされた研究分担者の多くが資料収集のための本格的な調査旅行を二年目に行うことに決定したことから、とりわけ旅費の支出額が当初の予想額よりも大きく下回った。また、人件費と謝金の支出額についても、初年度ということもあり、大きな支出がなかったことも、繰越金が多くなったことにつながった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、申請時に研究者番号がなかったため研究分担者にお願いできなかった政治文化に関する二名の研究者(鶴見太郎氏、西村木綿氏)に当研究プロジェクトに参加していただく予定であり、両名からの承諾も得ている。また、文学の分野が手薄であることから、さらにもう一人の文学研究者に加わっていただくことも検討している。 また、各分担者は、夏期および冬期の休暇期間などを利用して、各研究テーマの資料収集に必要な研究旅行をそれぞれ数週間程度の期間で計画しているが、繰越金を有効活用して滞在期間を長めに設定するなどして対応する予定である。 さらに、人件費や謝金については、今年度に四回程度を予定している公開ワークショップ等で外部の講師やコメンテーター等を招聘することなどを検討し、繰越金の適切な使用に努めたい。
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